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【特別対談】加部究&幸野健一:理不尽が横行する高校サッカーの非常識。真の「プレーヤーズ・ファースト」が浸透するために必要なこと(その2)

理不尽な指導はなぜなくらないのか? なぜいつまでたっても真の「プレーヤーズ・ファースト」が浸透しないのか? サッカー界への貢献を果たす一方で様々な弊害やひずみも生んでいる高校サッカーの問題点を昨年末に『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(カンゼン)を上梓したスポーツライターの加部究氏とJリーガー・幸野志有人選手(FC東京)の父としても知られ、サッカー界の育成における問題を解決すべくサッカー・コンサルタントとして活動する幸野健一氏に語っていただいた。数回に渡ってお届けする。

シリーズ:【特別対談】加部究&幸野健一 text by 森哲也 photo by editorial staff

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昔は賞賛されていた国見高校の指導方法だったが…

――選手に考えさせるボトムアップ的なやり方は、今までやっていない人たちが突然取り入れようとしても難しいことが多いと聞きます。

加部 いきなりやるのは難しいですね。

【特別対談】加部究&幸野健一:理不尽が横行する高校サッカーの非常識。真の「プレーヤーズ・ファースト」が浸透するために必要なこと(その2)
加部究氏と幸野健一氏【写真:編集部】

――指導者の養成も必要ですよね。

幸野 もちろんそうですね。実際、ついこの間まで暴力を振るっていた人たちがいますが、「今までのやり方を反省して、これからは変える」と言ってくれれば良いと思います。でも、過去のことを隠す人が少なくない。

加部 重要なポイントですよね。野球だと桑田真澄氏が体罰を受けていたことを打ち明け、警鐘を鳴らしていましたが、サッカー界では、こうした声を上げる選手がいない。

幸野 結局、自分の恩師を貶めることになってしまうからですよね。それでも誰か勇気のある選手が出てくるかと期待していましたが、やっぱり現実は難しいんだなと思いました。でも、どこかでこの連鎖を断ち切らなきゃいけないと思いますし、今こそそのタイミングだと思います。

加部 今は過渡期ですよね。例えば昔の国見高校の指導だって、以前は結果が出ているという理由で賞賛されていたのに、桜宮高校の件があってからは、あれは体罰だったよね、と評価が逆転する。急にそんな風に言われても、旧来のやり方でやってきていた人たちは、これからどうしていいか困りますよね。

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