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香川真司 10年前

指揮官の一貫性なき選手起用が招いたマンUの低迷。“浅はかさ”の犠牲になった香川が立ち向かうプロ生活最大のサバイバル

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

不公平な選手起用

 まず、この試合でファン・ペルシー、ルーニー、マタの3人を同時先発。いくらなんでも早すぎないか。

 ファン・ペルシーは2ヵ月半、ルーニーも1ヵ月の負傷明け。1月25日に加入したばかりマタは、今季チェルシーでモウリーニョに干され続けていた。

 この3人がいかに潜在能力の高い選手達とはいえ、100%の出来にはまだ遠いはずだ。これはフィットネスを重視するモイーズ監督にしては、少々短絡的な決断ではないだろうか。

 ここで香川を例にすると、シーズン前半、コンフェデ杯出場でプレシーズン参加が遅れ、フィットネスが足りなかったことが原因で、モイーズ監督は日本代表MFを頑として使わなかった。

 しかし、10月23日の欧州CL戦(対レアル・ソシエダ)で香川が見せ場を作ると、その後はアーセナル戦も含め、先発起用した。こういう香川の使い方には、モイーズ監督のフィットネス哲学がしっかりと見え、公平さも感じた。

 しかしファン・ペルシー、ルーニー、そしてマタとなると話が違うようだ。自分の基準より、名前を優先した起用と言っていいのではないか。
 
 ファン・ペルシーは前節、そしてこのストーク戦でもゴールを決めたが、まだ90分は戦えない状態。CB2枚が故障退場してキャリックがセンターバックに下がり、その影響でトップ下からボランチまで下がったこともあって、ゴールに絡む“らしい見せ場”を作れなかったが、ルーニーは明らかに試合勘が鈍っている様子だった。

 かつてファーガソン前監督は、「怪我明けのウェインは、ベストに戻るまで多少時間を要する」と話していたが、あのワンダーボーイの「考える前に動く」という天性のサッカー感覚は、やはり試合に遠ざかってしまうとなかなか取り戻せないものなのだろう。

 しかもファン・ペルシー、ルーニー両エースが不在の間、マンチェスター・ユナイテッドを引っぱり、今の攻撃陣の中では最もフィットしているはずのヤヌザイの出番もなし。

 もちろんマタ加入の最大の犠牲者は、この試合でベンチ外となった香川真司だが、負傷者続出の1月、チームを支えたヤヌザイやバレンシアは、この試合をベンチから眺めてどんな気持ちになっただろう。

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