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“香川ジレンマ”のデジャヴ。マタ活かせぬモイーズ、無駄だった63億円の投資

マタを獲得してもマンチェスター・ユナイテッドのサッカーに変化は見られない。そればかりか、マタの良さはまったく活きておらず、本人も戸惑うばかりだ。この状況は香川が追い込まれていった時と似ている。モイーズが63億円も使った意味はあったのか?

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Marc Morris / Kaz Photography

連携なく、あまりに消極的

「Moyes doesn’t like creative players.」(モイーズはクリエイティブな選手が好きじゃないんだ)

 これは、香川が出場機会を与えられていなかった今季開幕直後、親交あるデイリー・テレグラフのマーク・オグデン記者が、つぶやくように発した言葉だった。

 妙なことを言うなと思った。この時は、モイーズがマンチェスター・U監督に就任したばかりで、その方針、スタイルをつかみきれてなかったということもあって、“どこにクリエイティブな選手を嫌う監督がいるのだろう”と思った。

 しかし2月12日のアーセナル戦で26試合を消化して、モイーズの全貌がほぼ見えた今、この「好きじゃない」を「使い方が分からない」と置き換えると納得できる。

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消極的な展開に終始したマンU対アーセナル【写真:Marc Morris / Kaz Photography】

 9日、フラム戦の後半ロスタイムに痛恨の同点弾を食らったモイーズは、この試合で心底失点を恐れた。それは、先週の日曜日、リバプールに5ゴールを奪われたアーセナルのベンゲル監督も同様だった。

 アーセナルはポゼッションを支配したにも関わらず、ここぞというところで最前線に人数をかけなかった。一方のマンチェスター・Uはもっと消極的で、ファン・ペルシー以外はボールを越えて相手側に侵入せず。全く押し上げなかった。

 こんな守備的な展開では、中盤にスペースがなくなり、膠着する。とくにボールを持たないマンチェスター・Uは、パスカットしてそこからボールを奪った選手がドリブルで前に出るという、あきれるほど連携がない戦い方をした。

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