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長友佑都 10年前

「今季最悪」、ダービー敗戦でインテル酷評も輝いた攻撃センス。長友の成長と勝ち取った信頼

text by 神尾光臣 photo by Ryota Harada

裏への飛び出しでチャンスを演出した長友

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チームは敗戦したがチャンスを演出した長友【写真:原田亮太】

 そして警戒されたのは、左の長友、右のジョナタンの両アウトサイドについても同様だった。SBに加え、必ず3ボランチの一角が張り出して複数で取り囲んで来た。コバチッチらのパスもプレスで封じられていたため、長友にとってはサイドを破るきっかけを探るのが難しいゲームとなってしまった。

 深い位置にポジションを取ればポーリがプレスを掛け、サイドでボールをキープすれば囲まれる。対面の右SBデ・シーリオは、前半戦のダービーでは走力で優位に立てていた相手である。

 しかし彼との一対一に持ち込ませて貰えず、逆に挟まれてボールを失いかける。スペースが潰されてパスも出せないので、サイドチェンジを試みたところミスキックになるシーンもあった。

 そうなれば、早いタイミングで裏に出してもらう他はない。そしてそれが上手くいった時には、きちんとチャンスになるのだ。まずは19分、最終ラインのロランドがSB裏のスペース目がけて正確なフィードを放る。長友はこれに反応。

 俊足を飛ばしてボールを受けると、遅れてマークに付いて来たデ・シーリオをかわし、フリーでエリア内に切り込む。そしてゴール前に詰めていたパラシオをかわし、クロスを放った。

 直線的なボールで詰めたFWに合わせるという狙い自体は、あの状況ではベストの選択肢だったに違いない。だがキックを繰り出すにあたり、一瞬の判断が命運を分けた。「ちょっとボールが弱くなってしまった(長友)」。GKの脇を抜いてパラシオに通すはずが、球威は不十分。ボールはアッビアーティにキャッチされてしまった。

 前半にはあと1回、45分にデ・シーリオを一対一から置き去りにして折り返しのボールを出している。しかしこれも、詰めていたFWに合わず後方へ逸れた。終了間際にも巧みにマークを外して右足でクロスを上げたが、これも合わなかった。

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