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Jリーグ 10年前

“史上最大”の日本代表は誇り高く狡猾な“弱者のサッカー”を志向するのか?

text by 大島和人 photo by Getty Images

ごく真っ当な「0-2」

 そんなメンバーを並べた日本の試合運びは、とにかく慎重だった。両SBの位置取りが低く、本田圭佑はFWながら最終ラインのカバーへしばしば下がってくる。前から奪うよりしっかり戻る、穴を空けないことを重視した方向性が見て取れた。

 ハビエル・アギーレ監督は、前からボールを刈るというより、最終局面での強さを生かした守備を志向しているのだろう。「大型選手がいないから別の守り方を模索しよう」ではなく、「大型選手を探そう」というところから始まっているのが、今回の選手選考だ。凡ミスから2失点を喫したし、リードを奪っていたウルグアイが無理をしなかったことも事実だが、“崩された”場面はほぼなかった。

 一方で、多少なりともアギーレ色が見えた守備と違い、攻撃面はあまりポジティブな兆候が見えなかった。強いていうなら球離れの良さとバックパスの多さ。ピッチの“幅”を使う意識も強く、クロスの本数もザッケローニ監督時代よりは明らかに増えていた。

 しかしボールを大事にしようという意識が裏目に出て、34分の失点は生まれた。酒井宏樹のバックパスから坂井達弥のコントロールミスが生まれ、それをエリア内で相手に奪われたという形である。

“史上最大”の日本代表は誇り高く狡猾な“弱者のサッカー”を志向するのか?
前半17分には岡崎の左クロスから皆川佑介が惜しいヘッドを合わせた【写真:Getty Images】

 選手同士の距離感、パス回しのテンポといったポゼションの質はまだ「お粗末」と言わざるを得ない。ボールを足元に付けて、ブロックの外でじっくり動かすのはメキシコ流のスタイルなので、そこは予想通りだった。ただ、どう崩すかという部分には手を付けられていない。例えばSBがボランチの脇に入るなり、CBが外に開いてSBを押し上げるなり、中盤の枚数を増やす工夫は必須だろう。そしてそういう流動性、連係は4、5日で身につくはずもない。

 もちろん前半17分には岡崎の左クロスから皆川佑介が惜しいヘッドを合わせたし、後半43分には武藤嘉紀の左ミドルがポストを叩いている。崩し切れない中でもそういうチャンスを演出できたことは、ポジティブに捉えていい。特に皆川は後半早々に交代してしまったが、ボールキープ、ゴール前に飛び込む動きと持ち味を出していたと思う。

 さらに言えば、ウルグアイはW杯ブラジル大会でベスト16入りした主力を、そのまま残したメンバー構成だった。彼らが皆川、坂井と初キャップの選手を二人も先発させた日本を連係面で上回っていたのは必然だ。0-2というスコアは、両チームの現在地を考えれば、ごく真っ当なモノだろう。

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