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代表 10年前

「ぐらつく世界王者」。衝撃の敗戦後、アイルランドにもホームでドロー。ドイツも例外でなかった“栄光の後の苦悩”

text by 本田千尋 photo by Getty Images

「全く驚くべきことではない」。1990年にも同じ状況に

 もちろん戦術面を考慮しなければならないが、ポーランド代表戦、アイルランド代表戦のドイツ代表の先発メンバーを眺めれば、とても1分1敗という結果に相応しいメンバーではないのも事実だ。

 国内が困惑に包まれる中で、「ドイツ代表が欧州選手権予選で問題を抱えていることは、全く驚くべきことではない」としたのは、1990年のイタリアW杯で西ドイツ代表として世界王者になったユルゲン・コーラー氏である。

 16日付のキッカー紙上でコーラー氏は「W杯の勝利の後で欧州選手権の予選を始めることは1990年もまた難しかった」と述べている。

 そして1990年10月31日、欧州選手権予選の初戦でドイツ代表がルクセンブルク代表に3-2でかろうじて勝利を収めた試合を引き合いに出した。その試合でドイツ代表は50分過ぎには3点のリードを奪っていたが、その後2失点を喫してしまう。ようやくルクセンブルク代表相手に辛勝した。

 世界王者のコーラー氏は言う。

「W杯のタイトルを勝ち取った後で、新しい挑戦に考えを向けることは、選手にとっては難しいことだ」

 栄光の後の苦しみを、既にドイツは知っている。それでいてなお、また新たな栄光を目指さなければならない。そのこともまた、ドイツは知っている。

 世界王者だけが知る、フットボールの業とは。ゲルゼンキルヒェンの夜に、その一端が垣間見えた。

【了】

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