ヴァンフォーレ甲府を退任する城福浩監督を支えた、家族との絆

2014年11月27日(Thu)16時31分配信

text by いとうやまね photo Getty Images
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息子との対話

城福浩 父の背中が語るもの
城福監督の一生の宝物とは?【写真:Getty Images】

 城福には、息子に対して負い目があったに違いない。「自分のせいで、いちばんの青春期に“サッカー嫌い”にさせてしまった」そう思っているところがある。高校の三年間は、常に「帰宅部」だった。息子は大学入学とともに、サッカー同好会に入った。とても楽しそうで、父は、ようやく罪悪感から解放されたのかもしれない。

 大学では、映像関係の学科に進んだ。その授業の課題で、『親に対する「感謝の意」を映像化する』というものがあった。城福は、よくわからないまま、撮影に駆り出された。

 それは、地面に置かれたカメラのそばで、ひたすらサッカーボールを蹴り合う、というものだった。自分と息子が向かい合い、ひとつのボールを、蹴っては止めて、蹴っては止めて、の繰り返しである。最後に息子とボールを蹴り合ったのは、いつだっただろうか?そんなことを思った。長いことボールの音が響いていた。

 数週間後、出来上がった作品を、家族みんなで見ることになった。そこで、はじめて全容が明らかになった。

 映像にはセリフも音楽もない。ボールを蹴る音と、止める音、そして、息づかいのみ。ローアングルから見えるのは、足元だけ。そこを繰り返し、繰り返し、ボールが行き来する。そして、いく度目かのボールを止めた瞬間に、暗転。画面に白抜きで、メッセージが一行入る。

―――親父ありがとう。

 二分足らずの映像だ。もちろん、宿題であるのはわかっていた。でも、どれだけ嬉しかったことか。「息子は、題材にサッカーを選んでくれたんです」それだけで、胸がいっぱいになったという。この作品は、城福の一生の宝物である。

【次ページ】親がなくとも

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