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ドメネク、アンリもその“被害者”。「言葉の暴力」に「虐殺」で応じた仏誌銃撃事件。改めて問われる『表現の自由』の意味

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

「特定の人を貶めるような絵は決して描かない」

 ドメネク監督がフランス代表を率いていた時代には、彼の不人気具合を表すものであったり、ティエリ・アンリが2010年のW杯予選のプレーオフでハンドを使ったあとは、大きな手に押しつぶされそうになっている小粒なアンリのイラストが印象的だった。

 ツール・ド・フランスを7連覇した(後に記録は取り消された)ランス・アームストロングがドーピングを行なっていたことを認めたときには、黄色い背景に浮かび上がる、鼻がピノキオのように伸びた(ピノキオは嘘をつくと鼻が伸びた)男の黒いシルエットが象徴的だった。

 しかしシュネーズ氏は、「事実に蓋はしないが、特定の人を貶めるような絵は決して描かない」というポリシーを熱く語っていた。

 ときに、モチーフになったアスリートの熱烈なサポーターから抗議文をもらうこともあったというが、シュネーズ氏自らが差出人に返事を書いてイラストの意図を説明することで、いつもわだかまりは解決していたという。

 アスリートやスポーツイベントには、健全なやり方で人々の意識を喚起する力がある。

 今回の事件の余波は今後もまだまだ続きそうだが、イスラム文化憎悪、排斥、といった穿った方向に傾きそうな今のフランスの流れを、正しい方向へ導いてほしいと願うばかりだ。

【了】

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