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支配率78%を可能とする「守備力」。ペップの理想を体現したバイエルンの貪欲さ

text by 本田千尋 photo by Getty Images

「90分間敵陣でプレーする」というペップの理想

 10分、アロンソのパスをカットしたボランドが自陣からドリブルを始めるが、シュバインシュタイガーとラフィーニャで挟み込むようにして、最後はボアテングがボールを奪う。

 11分には、ボアテングの縦パスをデカリがカットしたボールを、そのままアロンソがカットして、ゲッツェに縦パスを入れる。こうした失ったボールを即座に奪い返そうとする「貪欲」な姿勢は、ゲーム全体を通して見受けられた。ブラウンシュバイクを相手に、バイエルンのゲーゲンプレッシンングが機能し続けた。

「90分間敵陣でプレーする」というペップの理想を、ボール支配率に換算するならば、究極的には100%ということになるだろう。しかし、どれ程対戦相手との間に力関係があろうとも、ボール支配率:100%という数字はあり得ない。

 どこかの小学生チームとの対戦であればいざ知らす、現実的にはバイエルンが行なう公式戦のゲームの中では、相手がボールを持つ時間は必ず存在する。

 アラバとペップが「支配していた」と振り返ったゲームでさえ、ブラウンシュバイクはボールを22%保持している。そしてその数字が数%でもあれば、25分の場面のように、カウンターでシュートまで持っていく可能性が生まれることになる。バイエルンからすれば、カウンターからの失点のリスクは常に存在する。

「90分間敵陣でプレーする」ためには、パスを繋ぎ続けるだけではなく、そのリスクを極力削り取らなくてはならない。そのためにも、敵陣で高い位置から、ボールを失った瞬間に仕掛けるプレスが必要になってくる。

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