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【独占インタビュー】市長選出馬の小谷野薫氏。元サンフレ社長が語る広島市の未来と課題

text by 編集部 photo by Ryota Harada , Yasuhiro Suzuki

開幕戦のサンフレッチェ存続問題のビラ「怪文書ではない」

「実際に私も以前の仕事で同じような経験をしました。プロ野球再編問題であったカープとダイエーホークスの球団合併の話です。この話は、公にメディアなどで浮上する半年以上前から、ダイエーを含むUFJ銀行の不良債権問題の処理の過程で、銀行や証券会社が、合併話を議論したり、実際に仕掛けようとしていました。関係者間では半ば常識でした。

 私も証券会社にいてその動きを漏れ聞いたので、危機感を感じ、カープファンの広島の友人たちに伝えましたが、『そんなことある訳ないよ』と誰もその話を信じようとしませんでした。

 サンフレッチェの今季開幕試合では、有志の方々がサンフレッチェの存続問題についてのビラを撒いたら、多くの方から怪文書扱いされたそうです。実際にこのビラをみると、確かに怪文書のような作りの箇所もあり、開幕戦に相応しくない趣旨なのかもしれませんが(笑)。

 内容自体は私のスタジアム協議会や所信表明での発言が大半であり、私から見て『どうかなあ』という表現も散見されますが、決して的を外れたことは書かれていないと思います。

 つまり広島の人たちは無意識のうちに『カープやサンフレッチェがなくなるわけない』と思っているということだと思います。しかし、そんなことはありません。経営や経済の世界は厳しいものです。ファンやサポーターの思いや想像を越える事態も当然あり得ます」

――この危機意識は重要なキーワードですか?

「そうですね。危機意識と将来に対するポジティブな思いは、まちづくりに関する両輪でなければなりません。財政運営にしても、経済的弱者に配慮しながらも切り詰めるところは切り詰める、投資するところは投資するなど、アクセルとブレーキを上手く操作することが重要です。

 今の広島のまちの雰囲気で言えば、都市計画やサンフレッチェの問題は悪い意味で楽観主義になっています。『何とかなるだろう』という気持ちの方々がまだまだ多いのではないかと思います。それでは何にもなりません。

 逆に、財政問題に関しては、危機意識が前面に立ちすぎて、ポジティブな話がはばかられる雰囲気があり街には停滞感が漂っています。それらの意識を少しずつ変えていき、いいバランス感覚がある市政運営をしていきたいですね」

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