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Jリーグ 9年前

広島封じに新潟が徹した“ミラーゲーム”を見破った佐藤寿人の頭脳。ゴール以外でも貢献するエースの戦術眼とは

text by 竹島史雄 photo by Dan Orlowitz , Getty Images

エース佐藤はゴール以外でもチームに貢献する

 さらに前半37分、広島は左サイドの柏好文がボールを持つと、得意の揺さぶり。この時、またも佐藤が伏線をしかける。ペナルティスポットあたりまで侵入したエースは一瞬の右への動きを見せながら、すぐに左へ切り替え、ニアサイドへクロスを受ける動きへと転進する。

 マーカーの大野も、ワンタッチゴールの達人を封じるべく追従する。そのことによってドウグラスのマーカー前野は、広島が久々に手にした高さのストライカーと共に、ゴール中央に孤立することとなった。そこで柏が得意のカットインから右足を一振り。

 ボールは弧を描いてドウグラスを目指した。184㎝のドウグラスは体勢にも有利。172cmの前野が止められなかったことを責めるのは酷でもあろう。ドウグラスは自分の打点をしっかり確保するとボールをたたきつけ見事にネットを揺らした。

 広島は第2節以来の前半での2得点。前半アディショナルタイムの失点にエースも反省の色を濃くしたが、「狙い通りの仕掛けができた」ことが後半の追加点につながった。

 佐藤は今シーズン一新したワントップツーシャドーのコンビを再構築することに腐心してきた。ここまで3得点、この試合も自らのシュートはゼロに終わったものの、頭脳的な動きで、アイデアやリズムに富んだ攻めを演出している。

 ゴールを量産してきた佐藤らしい分析力で、相手の隙を突く戦術眼は今季鋭さを増している。爆発的なスピードで飛躍の途上にある浅野をものともせず、先発に君臨し、佐藤はゴール以外でもチームの攻撃をけん引している。

 サンフレッチェはこれで3試合ぶりの白星で、上位追走。2年前の連覇王者が虎視眈々と復権を狙っている。

【了】

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