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日本代表 9年前

原口、宇佐美、武藤がもたらす推進力とハイレベルな競争。日本代表は“ハードワークできるスペシャルな個の集団”へ

text by 河治良幸 photo by Getty Images

原口、宇佐美とは異なる武藤の特性

原口、宇佐美、武藤がもたらす推進力とハイレベルな競争。日本代表は“ハードワークできるスペシャルな個の集団”へ
マインツへの移籍が決まったFC東京の武藤嘉紀【写真:Getty Images】

 ドイツのマインツへの移籍が決まった武藤はスピーディに仕掛けてもバランスが崩れず、推進力あるドリブルから直角に近いカットインを繰り出すこともできる。また体格以上にボールを扱う範囲が広く、アクロバティックなトラップからフィニッシュに持ち込むこともできる。

 今季のFC東京では2トップの形からワイドに動き、味方の縦パスを引き出しており、いい形で受けられれば2タッチ目で鋭いシュートを放つことができる。守備意識も高く、味方がボールを奪った瞬間からゴールを向ける意識が高い得点力を支えている。

 課題はシュート精度が高い割に、DFのブロックやGKと冷静に駆け引きできていないシーンが目立つことで、宇佐美に比べるとどうしてもゴール前で“行き当たりばったり感”が出てしまう要因ではないか。

 またチームのリズムが悪い時に相手ディフェンスの陰に隠れる形で消えてしまう傾向もある。最近はマークが特に厳しくなり、時にはオフで3方向から囲まれることもあるほどだったが、一度小さなスペースにのぞいて1タッチでフリックし、動き直して受けるなどのプレーは物足りない。

 その問題は宇佐美にも原口にも当てはまることで、トップ下の香川や清武と比較すればやはりサイドから勝負する特性が強いとも言えるのだが、そうしたプレーを加えていけると欧州でも成功できる可能性は高まり、日本代表でももう1つ上のステージにいく手がかりになるはずだ。

 そうした3人それぞれの、また共通する課題はあるものの、サイドからゴール方向に違いを生み出せるハイレベルなタレントが3人揃ったということは日本代表に大きな推進力をもたらし、得点力に直結するはず。

 彼らを競わせながら本田、香川、清武、あるいは柴崎岳といった選手たちと絡め、時に並び立たせるなどどういった起用法で持ち味を発揮させていくのか。その先に“チームのためにハードワークできるスペシャルな個の集団”という、これまでの日本代表でなかなか実現できなかった攻撃陣が出来上がっていく期待が高まってきている。

【了】

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