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【独占インタビュー】作者・大今良時氏に聞く。FC岐阜とコラボ、異色の作品『聲の形』はどのように生まれたのか?

「もしダメならよそで描こうかなというくらいの感じ」

――新人賞を取ったということで、作品にはそれなりに自信があったんじゃないですか?

「新人賞の応募作として描き終えたときにはすごく達成感がありました。単純にどういう反応があるものなのか興味があって。それで賞を取って、でも載らないよと言われたときは『載らないのかあ。でも、そりゃそうなのかな』と思いましたね」

――「どうして?」とは思いませんでした?

「ネームの段階で『これはもしかしたら載らないかもしれない』と思っていたんです。『これを描くのは最初で最後だよ』と当時の担当さんからも言われていたので。もしダメならよそで描こうかなというくらいの覚悟でいましたね。賞を取って『マルドゥック・スクランブル』を連載するまでに半年くらいの間があったんですけど、その間はすごく自信を喪失していました」

――それはどういう意味で?

「まず、描いていいものとは何かというところからはじまって、評価はされたけど掲載はされないということで、私はどの方向を目指せばいいんだろうと。ちょうどそのころは『別冊少年マガジン』という雑誌を創刊する時で『週マガでできないことをやろう』というコンセプトでいくということから『マルドゥック・スクランブル』の話がきたんですね。

『マルドゥック・スクランブル』は結構際どくて、『週マガ』には合わなさそうな、どちらかというと少年向きではなく青年向きの話で、その仕事をやれば描いていいものと描いちゃいけないものがわかるんだろうなと期待しながら描いていました」

――マス媒体だとどうしてもそういう問題に行き当たったりしますよね。『聲の形』は私にとって、あくまで個人的にということですが、くらもちふさこさんの『糸のきらめき』(1977年『別冊マーガレット』掲載)という作品以来の衝撃だったんですが、『聲の形』はとても反響が大きかったわけですよね。その反響が大今さんに影響を与えたということはないんですか?

「うーん、自信はつきました。内容に影響するようなことは特になかったんですけど、反響によって伸び伸びと描けるようにはなりましたね、気持ち的に。読者の皆さんの感想は、一つひとつ、私自身が共感しながら受け取らせていただきました」

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