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PK ~最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?~

膨大な取材とデータが解き明かす12ヤードの攻防に隠された真実

ガンバ大阪・遠藤保仁選手の「コロコロPK」についての内容も収録。

PKはサッカーにおいて恐らく最も簡単に奪えるゴールである。
ゴールラインからわずか12ヤード(11メートル)のペナルティスポットから、静止したボールを蹴るだけだ。
ところが、考案されてから120年以上が経つPKの歴史には、数々のドラマが生まれ、ミスによって流された涙は川になるほどだ。
簡単なはずのPKがなぜとんでもなくむずかしくなってしまうのか?

世界最高と称えられた偉大な選手たち、たとえばディエゴ・マラドーナ、ヨハン・クライフ、ロベルト・バッジョなどでさえ、GKを欺いてゴールする能力がないことを証明してしまった。PKに成功する秘訣とはいったい何だろう?

その答えを求めて本書の著者ベン・リトルトンは世界中を駆け巡った。
試合中のPKとPK戦を詳細に分析した学者に会い、PKに強い選手とセーブ率の高いGKに食い下がって彼らの業務秘密を聞き出し、プレッシャーがかかるPK戦において選手が影響を受ける身体的、心理的な要素を専門家に取材した。ときには自ら実験台になって、教えられた秘訣を試してみるところまでやってのけた。

ペトル・チェフがチャンピオンズリーグ決勝のPK戦で、6回続けてボールが蹴られる方向を読んでダイブできたのはなぜなのか? なぜドイツ人はPK戦に強いのか?
パネンカ・キックはどのように考案されたのか? 遠藤保仁のコロコロPKはなぜ成功するのか?
プレッシャーのかかる大試合で主審がPKを与えるのはどういうときか?
そして著者の大命題、なぜイングランド代表はPK戦にかくも弱いのか?

本書はPKをスポーツ、科学と文化史などさまざまな側面から考察した画期的な著書である。
本書を一読すれば、サッカー関係者は長年頭を悩ませてきた「どうすればPKに強くなれるか?」という命題の回答がきっと見つかるだろう。

【目次】

■第1章 イングランド病■
イングランド人たちの言い訳/天敵ポルトガル人GKリカルド/ドイツ相手に生まれたPK戦への苦手意識/因縁の敵、アルゼンチン/イングランドを追い詰めたピルロの“パネンカ”

コラム●マット・ル・ティシエ

■第2章 オスロ解決法?■
PK研究で名をあげたノルウェー人研究者/PK失敗に繋がりやすい回避行動/練習と準備は異なる/“PK職人”は研究者の見解に賛同するか

コラム●アントニン・パネンカ

■第3章 PKのDNA■
GK大国ドイツの土壌/PKで強さを発揮する気質/セードルフの特殊な神経/“PK教授”を自認する経営コンサルタント/ガーナが見たPKの悪夢/スペインを呪縛から解き放ったファブレガス

コラム●マルティン・パレルモ

■第4章 PKをめぐるドラマ■
伝説を事実にしたマルコス/FIFAから廃止を要請されたアメリカ式PK/必ず誰かの悲劇を生むPK戦/ザンビアを団結させたアンセム

コラム●リック・コッペンス

■第5章 ビッグデータが勝率を上げる■
シーズン勝ち点3.87の価値を持つデータ/7割以上キックの方向を読むチェフ/コイントスは勝率を6対4にする/キッカーの集中力を削ごうとするGKたち/成功率の高いGK依存型:バロテッリ、遠藤保仁、メンディエタ/優秀なキッカーはPK戦で何番目に蹴るべきか

コラム●セバスティアン・アブレウ

■第6章 有名選手ほど失敗する?■
1日違いでPKを失敗したロナウドとメッシ/バッジョの贖罪/マラドーナの5連続失敗/スター扱いがラウールをPK下手にした/監督がPKに及ぼす影響力

コラム●ブランディ・チャステイン

■第7章 GKはPKキッカーにふさわしいか■
開拓者チラベルト/100得点越えのロジェリオ・セニ/たまたまPKキッカーになったステップニ、ブット/PKエキスパート、ランドロー

コラム●PKの発明者

■第8章 審判とPKの微妙な関係■
サッカーファミリーの鬼っ子/判定に激怒した解説者/だまされる側の不条理/PK判定という強権発動/PKをめぐる倫理的な問題

コラム●PK戦の発案者は誰だ?

■第9章 他競技に学ぶPK成功法■
ラグビー:キックのルーティーン化/ハンドボール:7メートルのペナルティ/ゴルフ:プレッシャー下でのプレー/“企業秘密”となった非公開の博士論文/アメリカンフットボール:キックの専門コーチ/自転車:競技が必要とするものを分析せよ

■著者について■
ベン・リトルトン(Ben Lyttleton)
ロンドン在住のフットボールライター。スポーツイラストレイテッド誌やタイム誌に寄稿するジャーナリストであり、ブルームズバーグTVでサッカーについての解説者もこなす。またサッカーのコンサルタンティングを業務とするサッカーノミクス社の創業者の一人で、取締役をつとめる。

実川元子(じつかわ・もとこ)
翻訳家/ライター。上智大学仏語科卒。兵庫県出身。メキシコオリンピックの釜本選手のハットトリックでサッカーの魅力に取りつかれ、以後お小遣いをためては週末に試合を見に行く趣味を現在も継続中。訳書にDビーティ『英国のダービーマッチ』、Jウィルソン『孤高の守護神』(白水社刊)、Aアリスン『菊とポケモン』(新潮社)、Lガンスキー『メッシュ』(徳間書店)など

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