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アジア 8年前

“日本の天敵”ケーヒルは“金の亡者”なのか? 母国の“英雄”に豪州人が抱く両義的な感情

text by 植松久隆 photo by Hisataka Uematsu, Getty Images

控え目だったオーストラリア復帰待望論

 ケーヒルは、その闘志をむき出しにするプレースタイルと決定力の高さで、上海申花のサポーターに愛された。熱狂的なサポーターの心を掴み離さなかった。開幕が迫る中で、誰もが今季も上海申花のケーヒルを見られるものだと思っていた矢先の電撃退団には、多くのファンやサポーターが失望と怒りの声を上げた。彼のソーシャルメディアにも退団を惜しむ様々なファンの声が書き込まれ、ちょっとした“祭り”状態が続いた。

 いざ退団が決まると、彼の周囲は俄然忙しくなった。16日の時点で移籍の可能性が取り沙汰されたのは、日中韓豪の4ヶ国。その中でも中国残留の可能性が抜きんでて高いのは周知の事実だった。

 実際、ケーヒルの代理人のアンテ・アリロビッチは、「彼は中国に残る。今から2日のうちに彼と会って、いくつかの興味深いオファーを検討することになる」と発言。韓国や日本にも興味を持つクラブがあったが、ケーヒル側の“希望価格”を聞いて、軒並み正式オファーを避けるに至ったと聞く。

 豪州国内でケーヒルの去就が取り沙汰されるたびに巻き起こる“待望論”は、今回は少し控えめだった。ケーヒル側の要求を満たせるクラブが、Aリーグにほとんどないことを知るファンは至って冷静だった。

「金満中国リーグのオファーに勝てるわけがないじゃないか」、「どうせ帰ってこないさ」、そんな諦観を持ちつつ事の推移を見守ったファンが多かったのだろう。ケーヒルの去就の話題が起こるたびに口さがないファンが言い立てるのは、彼とその代理人アリロビッチの“金”への執着心。

 実際、今回の経緯をめぐるソーシャルメディアの書き込みで、どれだけの$(ドル)マークの入った書き込みが見られたか。高額オファーを優先させるケーヒルの行動に鼻白む人が多いことも否定できず、人によっては“金の亡者”とまで言い捨てる。

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