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F・トーレスが誓うアトレティコへの忠誠。“エル・ニーニョ”とロヒブランコ、純愛の物語【前編】

text by アルベルト・ロメロ・バルベーロ photo by Getty Images

4万5000人が駆け付けたトーレス帰還のセレモニー

2016051トーレスの復帰セレモニーには4万5000人のアトレティコサポーターが駆けつけた
トーレスの復帰セレモニーには4万5000人のアトレティコサポーターが駆けつけた【写真:Getty Images】

 とはいえ、美しい物語の定義通りに悲劇的な結末となったチャンピオンズ決勝含め、リーガ、スーペルコパ優勝という成果を残した2014年が、アトレティコにとって歴史的な1年であったことに疑いの余地はない。そしてこの1年は、ファンに喜びの感情を噴出させるトーレスの帰還によって締めくくられたのだった。

 トーレスの移籍が合意に至った場所は、ドバイ。グローブ・サッカー・アワードやビッグクラブ同士の親善試合が行われることにより、年末にフットボールの中心となる地である。ヒル・マリンはグローブ・サッカー・アワード参加のため、トーレスの在籍するミランはマドリーとの親善試合のためにこの地を訪れ、移籍交渉をまとめ上げた。

 アトレティコの広報部長ラファエル・アリケ、トーレスの代理人アントニオ・サンスは交渉合意後にドバイへと駆けつけ、トーレス帰還のオーガナイズに着手。そうしてエル・ニーニョは12月30日にマドリッドのバラハス空港に降り立ち、100人以上のアトレティコファンに迎え入れられた。

 さて、トーレスとアトレティコの愛情の重さは、結局いかほどだったのか。カルデロンでの入団発表が行われる前、クラブは2万人から2万5000人がスタジアムに赴くと予想。だがクラブの警備責任者であるリカルド・サンチェスは、より明確な考えを述べていた。

「3万5000人だね。まあ見ていろよ」

 リカルドの読み通り、クラブの予想は外れた。しかし彼も胸を張ることはできなかった。

 1月4日、日曜の肌寒い朝にカルデロンに集まったのは、じつに4万5000人。普段であれば、入団発表の際に解放されるのはバックスタンドだけだが、リカルドはメインスタンドの使用許可も得ることになったのだった。

 この事実は、リカルドの受難の日々が始まったことを意味する。

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