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「劣っていると認められることこそが、我々の長所となる」。闘将シメオネのフットボール観【中編】

シリーズ:闘将シメオネのフットボール観 text by 江間慎一郎 photo by Getty Images

「私の選手たちは死という恐怖に怯むことがない」

G 今日の話で、アトレティコがなぜ大舞台で強さを発揮できるかが実感できるね。

S アトレティコはどんなときにも勝利を手にできると思われているが、フットボールの試合である限り絶対はない。ただ、その試合(バルセロナ戦)に臨むことにおいて、不安は感じていなかった。

 選手たちが良いプレーを見せると確信していたよ。なぜかと言われれば、彼らには死ぬ覚悟があるからだ。そう、私の選手たちは死という恐怖に怯むことがない。フットボール的な感覚で話していることだが、分かるだろう? 彼らは死を恐れておらず、そのような覚悟はおそらく、ほかのクラブの選手たちにはないはずだ。

 最終節で優勝を懸けてバルセロナに赴く……。もしその試合がどうなるかということを分析すれば、あそこには行かない方が賢明だろう(笑)。プロフェは「あそこでタイトルを懸けた試合に臨むなど、絶対にしてはならない」と言っていたが、もちろんその通りだよ。

 バルサがリーガ最終節のホーム戦で優勝を決められる状況ならば、試合を戦わない方が良い。絶対に勝てないし、負けるに決まっているんだからね(笑)。実際、前半にバルセロナはアレクシス・サンチェスがゴールを決め、我々はコスタとアルダが負傷するという予想などできない状況に陥った。60分を残した段階で、交代枠は1つしか残っていなかったんだよ。

 ただ前半終了までの5分間、我々は3度にわたってCKを獲得し、相手がうまくいっていないような感覚を手にした。それがどうしてかは聞かないでくれ。君たちのように試合を見続けているコメンテーターが「このままであればゴールが決まる」と話すように、そのような状況では実際にゴールが生まれるものなんだ。

 そしてハーフタイムにロッカールームへ戻ったとき、ヘルマンにはこう言った。「俺たちは良い感じじゃないか。そう、良い感じ、良い感じだよ。ファンタスティックだ」とね(笑)。

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