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フォルランのプロフェッショナリズム。ウルグアイ人の根底に流れる“ガーラ・チャルーア”【フットボールと言葉】

シリーズ:フットボールと言葉 text by 竹澤哲 photo by Getty Images

フォルランを説得した父の友人、ホルヘ

(フォルランの父パブロの友人、ホルヘ・デ・パウラ)「(フォルランの家は)友人としてもよく訪れていましたから、週に2、3回通っていたでしょうか。パブロが『ホルヘ、スーパーマーケットへ一緒に行ってくれないか、用事があるんだ』と外へ私を連れ出し、私に話したのです

『ディエゴにはテニスの才能もあり、続ければプロテニス選手としてもトップ100に入れるだろう。しかしフットボールではAクラスの歴史に残るような選手になれるだろう。ディエゴに話してもディエゴが怒るだけなので、いつも一緒にいる君から話して欲しい』と私に頼んだのです。

 当時ディエゴは13歳で、私の車を使って、運転の練習を一緒にしていました。運転して一緒に出かけることが多かったのです。ディエゴは私にべったりくっついていましたから、パブロはディエゴを説得できるのは私だと考えたのです。

 しかしミッションは、簡単ではありませんでした。ディエゴの決心はとても固かったからです。ある日の午後、スポーツクラブへ出かけました。空に満月が輝き始めたのをよく覚えています。

 私たちは話を始めましたのですが、どうやって話を切り出したらいいか分かりません。彼はテニスをやっていて十分に満足していましたから、フットボールだけを続けていくことは頭にありませんでした。当たり障りのない話をして時間はどんどん過ぎていきました。

 ディエゴの興味を惹いたのはフットボールチームのプレシーズン合宿でした。1月に1ヶ月間行われる合宿です。プレシーズン合宿は極めて基礎的なトレーニングで、フットボールだけでなく、テニスにも効果があり、どんなスポーツをするにしても役に立つ。そこでフィジカルの基礎トレーニングをすれば、翌年、どんなスポーツをするか分からなくても、効果があると話しました。

 もし、君がペニャロールの練習に参加すれば、クラブのジェネラルコーディネーターを務めている君の父は喜ぶだろう。彼は模範的な人物だし、フットボール界の偉大な人物だ、少なくとも父親を喜ばせなければならないと私は言いました。

 そして彼は参加することにしたのです。その後、ディエゴはプレシーズンの合宿に行ったら、とても気に入った。僕はフットボールをするよと言ったのです。一度フットボールをすると決めたら、後はみんなさんがご存じの通りです。そこから彼のキャリアが始まったのです」

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