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アトレティコ、CL決勝で宿敵に苦杯も…世界に示したポゼッションの価値観崩す新たなサッカー【15/16シーズン査定】

2015/16シーズンも各国リーグで最終節を終え、シーズン終幕を迎えた。タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な思惑を抱えていた各クラブだが、その戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回はアトレティコ・マドリーを振り返る。(文:海老沢純一)

シリーズ:15/16シーズン査定 text by 海老沢純一 photo by Getty Images

欧州の舞台で見せ続けた“チョリスモ”の完成形

ディエゴ・シメオネ監督
2011/12シーズン途中から就任したディエゴ・シメオネ監督【写真:Getty Images】

 たった1つ、防ぎきることのできなかった失点が今シーズンを辛く重い記憶に変えた。

 現地時間5月28日、イタリア・ミラノのサン・シーロ。前半15分に与えたFK、トニ・クロースが蹴ったボールをガレス・ベイルが頭で流す。ゴール前の混戦に流れ込んできたそのボールに触れたのはセルヒオ・ラモスだった。

 今季、リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグの3つのコンペティションで計57試合を戦ったアトレティコだが、喫した失点は27。1試合平均にすると、わずか0.47点。

 2011/12シーズン途中から就任したディエゴ・シメオネ監督は、2試合を戦っても1点を奪われない強固な守備組織を築き上げ、スペイン内でバルセロナ、レアル・マドリーの“2強”から遠く離れた3番手という位置付けだったクラブを“3強”と称されるまでに押し上げた。

 就任初年度の11/12シーズンにはヨーロッパリーグを制覇。翌12/13シーズンには17年ぶりにコパ・デル・レイ優勝に導くと、翌13/14シーズンには18年ぶりにリーガエスパニョーラの頂点に立った。

 残るは欧州王者の称号のみ。リーグ王者に輝いた13/14シーズンにもファイナルへと進出したが、この時はカルロ・アンチェロッティ監督率いるレアル・マドリーに延長戦の末に敗れた。しかし、当時は“チョリスモ(シメオネ主義)”の浸透度も100%ではなく、リーグ優勝に加えてCL決勝進出という結果は期待以上のものだったといえた。

 そして迎えた今季、アトレティコ・マドリーは“チョリスモ”の完成形ともいえる戦いを欧州の舞台で見せ続けた。

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