フットボールチャンネル

メッシ、代表引退の舞台裏。アルゼンチン協会の腐敗ぶり。首脳陣の不在、求められる正常化

text by 藤坂ガルシア千鶴 photo by Getty Images

メッシ復帰には、まずAFAの正常化が必要

かつてスポンサー収入の40%がメッシの存在によるものと語った故フリオ・グロンドーナ元会長
かつてスポンサー収入の40%がメッシの存在によるものと語った故フリオ・グロンドーナ元会長【写真:Getty Images】

 AFAの収入には、リーグ戦放映料の他、スポンサー料や親善試合によるギャラも含まれているが、故フリオ・グロンドーナ会長は生前、スポンサーからの収入の40%がメッシの存在によるものだと語っていた。アルゼンチン代表の親善試合をマッチメイクするエージェントの代表者ギジェルモ・トフォーニによると、以前は1試合につき15万ドルから20万ドルの報酬を得ていたが、メッシがいる現在は約100万ドルに及び、何らかの理由でメッシが出場できない場合は40~60%減になるという。メッシがいなければ、AFAの収入は半減してしまうのだ。

 メッシがコパの決勝後に一体何を話そうとしていたのかは、現時点では知る術がない。しかし、これまでメッシを最大限に利用して多額の利益を得てきたAFAから金はどこかに消え、代表チームが必要とするものも与えられず、更に幹部の不正が暴かれて全世界中に恥をさらすこととなってしまった。メッシも、そして他の代表選手たちも、そんなAFAに嫌気がさして当然だろう。

 裁判官とFIFAが解決策を見出す方向で合意に至り、今のところFIFAからの除名は逃れたが、セグーラ会長は辞任し、7月1日現在、AFAは首脳陣が不在という状態にある。次期監督候補にディエゴ・シメオネの名が挙げられ、アトレティコ・マドリーのエンリケ・セレッソ会長が「AFAから問い合わせがあったがノーと言った」というニュースが流れたが、実際には問い合わす代表者さえいないのである。

 メッシを代表に呼び戻すには、何よりもまずAFAが正常化し、秩序を取り戻さなければならない。私服を肥やす役員ではなく、アルゼンチンサッカーの将来のために労力を費やす人材を選び、完全に忘れられているユース代表の活動を復活させ、監督選びを含め、強化のための誠実なプロジェクトプランを立てる必要がある。

 世界のトップクラスに立つ優れた選手と指導者に恵まれるアルゼンチン。これを生かすか殺すかは、AFAの今後次第なのだ。

(文:藤坂ガルシア千鶴【アルゼンチン】)

【了】

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top