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メッシ、代表引退の舞台裏。アルゼンチン協会の腐敗ぶり。首脳陣の不在、求められる正常化

text by 藤坂ガルシア千鶴 photo by Getty Images

不正により資金不足に陥ったAFA

FIFAから退任を命じられたAFAのセグーラ会長
FIFAから退任を命じられたAFAのセグーラ会長【写真:Getty Images】

 これらの原因は、全てAFAの現状にある。

 とにかく、金がない。ハイクラスのチャーター便を手配できなかったのも、U-20代表を帯同させることができなかったのも、不足していたジムのマシーンを補うことができなかったのも、全ては予算に限りがあったためだ。ちなみにマルティーノ監督以下指導スタッフも、今年2月から5ヶ月間、報酬を一切受け取っていない。

 AFAほどの組織が資金不足になることは、本来ありえない話だ。リーグ戦の放映権だけでも、国営放送、すなわち政府から多額の放映料が支払われてきており、昨年は12億8000万ペソ(およそ8500万ドル)もの収入を受け取っているのだが、使途がわからないまま全額が消えてしまった。

 昨年12月の新大統領就任とともに国家予算の見直しが図られ、真っ先に削られることになったのがリーグ戦放映料だったが、ここで初めて前政権がAFAに支払っていた莫大な金額が明らかになり、司法当局が捜査に乗り出した。

 調べれば調べるほど協会内部の不正が暴かれ、この結果、セグーラ会長以下幹部6名が起訴されることに。また、司法に裁かれる事態を重く見たFIFAからも調査団が派遣され、数々の不正が行なわれていた事実を確認。コパ決勝前にはFIFAがセグーラ会長の退任を命じ、協会内部に正常化委員会の設置を義務付けたが、捜査を担当するアルゼンチンのマリア・セルビーニ・デ・クブリア裁判官がFIFAの介入を否認したため、一時はAFAがFIFAから除名される危機にさらされた。

 代表チームがコパに参加している間、調査団の要求に応じてセグーラ会長と幹部たちは何度もアルゼンチンとアメリカを行き着せねばならず、AFA代表者がひとりもいない状態が何日も続いた。この結果、選手たちが遠征先で放置状態となってしまったというわけである。

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