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Jリーグ 8年前

磐田・20歳のGKが掴んだ千載一遇のチャンス。高卒2年目、志村滉が挑む偉大な先輩超え

text by 青木務 photo by Tsutomu Aoki,Getty Images

「キーパーでチームを勝たせることもできる」

 プロの世界に年齢は関係ない。とはいえ、GKというポジションにはキャリアを重ねた者にしか出せない安定感や安心感がある。ジャンルイジ・ブッフォン、イケル・カシージャスといった世界有数の守護神たちは、30代をとうに越えても国を背負うにふさわしい力を誇示してきた。

 一方で、熟練の技を持つ彼らが若くして正GKの座を射止めたのもまた事実である。

 ブッフォンはパルマ時代の1995年、17歳でセリエAデビューを果たすと、翌年にはレギュラーの座に就いた。カシージャスも19歳でチャンピオンズリーグを制覇。その後の飛躍に繋げている。

 日本国内に目を向けても、1990年代後半から2000年代にかけて凌ぎを削った川口能活と楢崎正剛は、“若手”と呼ばれた時代から守護神としてチームのゴールマウスを守ってきた。彼らは日本代表でも切磋琢磨を続け、W杯本大会の正GKとして交互に世界の桧舞台に立っている。

 偉大なGKたちが辿った道を、志村は進んで行けるか。現段階で判断するのは時期尚早で、カミンスキーと八田が万全の状態に戻れば定位置を奪い返されるかもしれない。だが少なくとも、ピッチに立ち続ける資格は十分にある。自身の課題と向き合い、チームメイトを観察しながら、自分に肉付けできるものをいつも探している。また、自らの声で守備陣を動かすこと、そしてGKのプレーで勝利を手繰り寄せることにも意識を向ける。

「もっとディフェンス陣を動かせればいいなと。あと戦う雰囲気とか、勝ち運。そういう雰囲気作りは(自分発信では)まだできていないと思うので、それもできるように。キーパーでチームを勝たせることもできると思う」

 プロとしてのキャリアは始まったばかりだ。天井はまだ見えず、成長の余地はとてつもなく大きい。それこそが、志村の可能性を示している。いずれ日の丸を背負い、世界と渡り合うことになるかもしれない。名前を覚えておいて、損はない。

(取材・文:青木務)

【了】

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