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EURO2016 8年前

ポルトガルが狙った膠着状態。大会中の戦術変更。菱形の中盤とスローテンポによる1点勝負【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

グループステージでのポゼッションスタイル

大会中に戦い方を転換させたフェルナンド・サントス監督
大会中に戦い方を転換させたフェルナンド・サントス監督【写真:Getty Images】

 当初、ポルトガルは攻撃的なポゼッション型のスタイルでスタートしている。

 緒戦のアイスランド戦の菱形MFはアンカーにダニーロ、右にアンドレ・ゴメス、左にジョアン・マリオ、トップ下がモウチーニョだった。両SB(ヴィエイリーニャ、ラファエル・ゲレイロ)は高い位置へ上がって幅をとる。実質的な中盤の構成は2人のSB、モウチーニョ、アンドレ・ゴメス、ジョアン・マリオの計5人。ここに2トップ(ロナウド、ナニ)のどちらかが引いてきたり、ダニーロが少し上がってパスワークをサポートする形である。

 中盤に多くの人数を投入し、一時的にでもフリーマンを作ってボールを支配する手法は他のポゼッション型チームと同じ。ただ、バランスは若干違っている。

 ポルトガルの場合、トップ下(モウチーニョ)は前線近くでプレーするのではなく、アンカーに近づいてパスワークの中心となる。相手DFとMFの中間で「間受け」をするのは、むしろアンドレ・ゴメスやジョアン・マリオ。モウチーニョの役割はスペインにおけるイニエスタやセスク、ドイツのクロースと同じと考えられる。

 他のポゼッション型が軒並み強靱な1トップを起用する中、ポルトガルだけが2トップだった。今大会で長身頑健な1トップが主流となったのは、ポゼッション側の優位性がかつてより減少したからだ。堅守速攻側が「ニアゾーン」と「間受け」のゾーンディフェンスの2大弱点をかなり克服できたことで、パスワークだけできれいに崩しきるのは難しくなり、高さやセカンドボールを狙ったアプローチが必要だった。では、なぜポルトガルだけが2トップだったのか。

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