フットボールチャンネル

【西部の目】ペップ・シティ、未完成もプレミア仕様の片鱗見せる。マンチェスターの赤と青、新章の幕開け

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

プレミア仕様の戦い方を取り入れたペップ

先制点を奪い、後半にはトップの位置でプレーしたデ・ブルイネ
先制点を奪い、後半にはトップの位置でプレーしたデ・ブルイネ【写真:Getty Images】

 かつてファーガソンはユナイテッドを「バス」に喩えた。

「ユナイテッドは常に前へ進むバスだ。何が起きようと、君たちがいようといまいと、バスは進んでいく」

 怪物級の選手たちが乗り込んだバス。そこから降りる人もいるが、お構いなしにバスは進む。選手に合わせて何かをしてくれることはあまり期待できない。やるかやらないかは選手次第、才能は遠慮せず存分に発揮していい。できないならバスを降りるしかない。言い訳無用。ユナイテッドには野武士の集団のような迫力がある。

 このバスの運転手としてモウリーニョ監督はうってつけだろう。ペップと違って“凝った”チームは作らない。各ポジションに実力者を配置し、攻守に穴のないチームを作る。オーソドックスだが手堅い。何も特殊なことは要求しないので完成するのも早い。早く出来上がるぶん賞味期限も2年と決まっているが、優勝できるチームを作る。

 シティはユナイテッドの猛攻に耐えながら、ときおり鋭いカウンターアタックを披露する。攻めっぱなしの試合が多いので気がつきにくいが、グアルディオラ監督はしっかり守備を仕込んでいたことがわかる。

 守備の強いフェルナンドを投入し、デ・ブルイネをトップに上げ、新加入のザネで幅をとる。前半のプレッシングではなく、ブロック守備からカウンターを狙っていた。これに関してはペップのチームらしくはないが、プレミアリーグを勝ち抜くには必要な戦い方だ。

 試合は2-1のまま終了、シティが勝利した。ただ、まだシーズンは始まったばかり。これから続く長い物語の始まりにすぎない。シティとユナイテッド、グアルディオラとモウリーニョ……青と赤の相克の歴史は続いていく。

(文:西部謙司)

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top