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ネイマール抜きでコパ敗退、危機的状況にあるセレソン。ドゥンガ解任とリーダー不在問題【フットボールと言葉】

異なる言語間では、翻訳困難な語は無数にある。それはフットボール界においてもしかり。外国のフットボーラーが語った内容を、我々はしっかりと理解できているのだろうか。選手、監督の発した言葉を紐解き、その本質を探っていきたい。今回は、リデランサ(リーダーシップ)をキーワードに、前ブラジル代表監督ドゥンガについて紐解いていく。ドゥンガ解任までのプロセスのなかに、ブラジルの抱える問題が垣間見える。(取材・文:竹澤哲)

シリーズ:フットボールと言葉 text by 竹澤哲 photo by Getty Images

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ネイマールの4試合出場停止処分

2014年ブラジルW杯後、ブラジル代表監督に復帰していたドゥンガ
2014年ブラジルW杯後、ブラジル代表監督に復帰していたドゥンガ【写真:Getty Images】

 2015年6月ドゥンガにとって、2014年に再就任して以来初の公式戦となるコパ・アメリカ・チリ大会が行われた。思えば、ここからドゥンガの凋落が始まることになる。

 6月17日に行われたグループリーグ第2戦のコロンビア戦では0対1で敗れた上、試合後最悪のことが起こる。

 試合中にイエローカードを受けたネイマールはその時点で、次の試合への出場停止となっていたが、試合後ネイマールはコロンビアの選手にボールを蹴りつけ、レッドカードをもらい、公式戦4試合の出場停止処分を受けることになる。

 実は、ドゥンガはコロンビア戦前にネイマールが自制心を持って戦えるかどうか、心配してネイマールにアドバイスをしていたのだった。初戦のペルー戦では多くのファウルを受けてネイマールはイライラし、イエローカードをもらっていた。コロンビア戦も激しい試合が予想されるだけに、ネイマールが再びイエローをもらうことが心配だったからだ。

「試合が白熱すればどうしても落ち着いてプレーできなくなることも理解できる。しかし相手の挑発を気にせず試合に集中するようにとネイマールに話したのだ」

 しかしそのような努力も無駄に終わり、心配していたとおりになってしまう。

「コロンビアが我々よりも試合巧者であった。我々の選手は、何回か相手選手の挑発に乗ってしまい、フットボールをプレーするのを忘れてしまった。フットボールだけに集中しなければいけなかったのだ」

 またネイマールの行動についてはレフェリーを批判し、ネイマールを庇った。

「残念ながらネイマールは感情を抑えることができなかった。しかしレフェリーはしっかりと試合をコントロールしていなかった。選手たちをナーバスにしてしまったのだ。試合後に起こったことは残念なことだった」

 しかしドゥンガはブラジルにはなく、コロンビアにはあったものが何であったのか。またコロンビアの優れた点についても分析することを忘れなかった。

「コロンビアは全員が一丸となり、インテンシティ(激しさ)をもって戦っていた。コロンビアはたった一皿の食事を全員で奪い合うように、貪欲に戦った。それが違いとなって表れた。個々の選手は経験を積んでいるし、選手たちは長い間一緒にやってきているため、チームは成熟していた。先取点をとってからは、試合をよくコントロールしていた」

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