「バックパス=後方へのパス」にはあらず。ルール変更がもたらした新しいGKの理想像【サッカー用語の基礎知識】

2016年10月04日(Tue)10時19分配信

シリーズ:サッカー用語の基礎知識
text by 実川元子 photo Getty Images
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クライフの攻撃的戦術におけるGK観

 サッカーの面白さ、美しさは攻撃にある、としていたクライフだから、フィールドプレーヤーは当然ながら、GKもチームの一員として攻撃に参加すべきである、と主張したわけだ。GKがバックパスを抱え込んで時間稼ぎをするなど、クライフは許せなかっただろう。

 1985年アヤックス監督に就任したクライフは「(GKは)グローブをつけたフィールドプレーヤーであるべきだ」と宣言した、とサイモン・クーパーは書いている。だが、理想を追い求め過ぎたためか、クライフが監督をつとめていた3年間にアヤックスはリーグ優勝がかなわなかった。

 高い位置にポジションを取り、DFの裏をついてきた相手FWの攻撃をカットし、攻撃の起点ともなるGKは「スイーパーキーパー」と呼ばれ、バックパス・ルール制定前から特に攻撃的なチームで活躍していた。そしてバックパス・ルール制定以降、異端視されていたスイーパーキーパーは、どちらかと言うと現代サッカーが求めるGK像へと変わっていく。

 その背景には、バックパス制定でGKにフィールドプレーヤーに劣らない足元の技術が求められるようになったことがある。バックパスをただ蹴り返すだけでなく、味方の攻撃につながるようなパスが出せるよう、試合を読む力も求められるようになった。クライフが予言したように、バックパス・ルールはGKにフィールドプレーヤーと並ぶ役割を与えることになった、と言えるのではないか。

 バックパス・ルール制定後、GKはゴールライン上に四六時中張り付いているわけにはいかなくなった。ときにはペナルティエリアから飛び出して相手攻撃の芽をつめるように、高い位置でのポジショニングが求められる。

 GKが高い位置にポジションをとることで、ディフェンスラインの背後のスペースを消す効果があるだけでなく、バックパスを受けてから攻撃に向けてつぎのパスの出し手となることができる。

 手が使える「フィールドプレーヤー」が一人加わることで、攻撃は厚みを増す。バックパス・ルールはGKの役割だけでなく、チーム戦術も大きく変えた、と考えられている。

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