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元マンU指揮官・モイーズが彷徨う“どん底”の闇。色褪せた「名将の称号」。逆襲への筋道は?【東本貢司の眼識】

デイヴィッド・モイーズが、苦しんでいる。マンチェスター・ユナイテッドの元指揮官が率いるサンダーランドは、今季のプレミアリーグで唯一開幕から白星がなく、最下位に転落している。エヴァートン時代には「名将」と称えられてきたモイーズだが、今は暗いどん底を彷徨っている。プレミアリーグの異才が描く、逆襲への筋道とは。(文:東本貢司)

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

サンダーランド、今季開幕から唯一の白星なし

モイーズ
サンダーランドのデイヴィッド・モイーズ監督【写真:Getty Images】

 シーズン開幕から3ヶ月、リーグ戦2分7敗――。勝てないサンダーランドの監督デイヴィッド・モイーズがファンに向けて発した「残留争いを覚悟すべし」の警告。もとい、それがモイーズの口からもたらされたのは、なんと、開幕第二戦・対ミドルスブラ敗戦の直後だった。

 このことからして、すでに開幕前から監督には事態を予見し、打開の糸口を見つけるのに苦慮していた節があったと見るべきだ。無論、それは決して“白旗宣言”にあらず、あくまでもファンやクラブ運営陣に対する「辛抱」の求めに違いないのだが…。

 背景には、近年のサンダーランドが演じてきた“多彩”な監督交代史がある。“多彩”とは、その歴代監督の国籍および過去の実績もさることながら、それぞれにアクとカンの強い個性と、そのほとんどで結果的にぎりぎりの残留闘争に耐え忍んできたストレスの“発散法(=辞め方)”にちなんでいる。

 ロイ・キーン、スティーヴ・ブルース、マーティン・オニール、パオロ・ディ・カニオ、グス・ポジェ、ディック・アドフォカート、そしてサム・アラダイス。以上すべてが、そのしかるべき特定の期間に「救世主」扱いされ、最後には失意か騒動、もしくはその双方のシンボルとして去っていった。

 最もトリッキーなケースは言わずと知れたビッグ・サムだ。追われたわけでもなく、代表監督に“出世昇進”したあとで不名誉な退陣を強いられた苦い後味は、きっとブラックキャッツ(サンダーランドの愛称)ファンにも及んでいるはずだ。モイーズの警告がちょうどその事件と相前後して発せられたのも、決して偶然ではあり得ない気もしてくる。

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