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元マンU指揮官・モイーズが彷徨う“どん底”の闇。色褪せた「名将の称号」。逆襲への筋道は?【東本貢司の眼識】

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

主力の流出に続出する故障者…モイーズ、浮上への“答え”が見つからず

アラダイス
モイーズ監督の前任として指揮を執っていたサム・アラダイス氏【写真:Getty Images】

 元より、不振、いや、想定内の不成績の最大の原因が、プレーイングスタッフの質量にあるのは誰の目にも明らかだった。モイーズ就任後、もしくはアラダイス退陣後、致命的誤算もあった。

 昨シーズン終盤の奇跡的残留に最も貢献したディフェンスの要の二人、ラミン・コネとユーネス・カブールの不在。カブールはワトフォードに去り、コネも移籍志願で事実上の戦線放棄…。それぞれサイドバック、中盤で存在感を示した二人のローニー(※)、デアンドレ・イェドリンとヤン・ムヴィラも元の巣に帰ってしまった。
(※)期限付き移籍している選手のこと

 モイーズはある程度は予測しながらも内心愕然としたことだろう。頼みのディフェンスと創造性豊かな中盤が、スタートから歯抜けのスクラッチ状態なのだから。

 論より証拠、昨シーズン末、唯一優勝したレスターに敗れた以外、無敗で乗り切った11試合中7試合をアラダイス・サンダーランドは不動のメンバーで戦ったが、そのうちミドルスブラ戦のピッチに立ったのは、ヴィト・マノーネ、パトリック・ファン・アーンホルト、ジャーメイン・デフォーの3名にすぎなかった。

 当然、モイーズは補強に打って出たが、その成果はお世辞にも芳しくなく、また、元より即戦力としてのチームアップは長い目に見るしかない。

 セネガル代表パピー・ジロボジは2015年にナントを離れて以来、明らかに実戦不足だし、マン・ユナイテッドの若手パディー・マクネア、アドナン・ヤヌザイ、そしてもはやトウの立ったスティーヴン・ピーナールもしかり。そんな現実を目の当たりにして、モイーズが嘆息し「覚悟」したのも無理はない。

 悪いことはさらに重なる。昨季終盤の快進撃をバックラインで支えたヤン・キアチョフが故障に倒れ、さらにチームシンボルの筆頭、リー・カタモールに、ようやく大器の片鱗を見せ始めたファビオ・ボリーニ、ヤヌザイまで故障者リストに仲間入り。

 直近ではキャプテンのジョン・オシェイまで戦線を離脱する、まさに満身創痍の状況なのだ。やむなく、新参の21歳ドナルド・ラヴやアカデミー上がりの20歳リンデン・グーチを抜擢してみてはいるが、如何せん“答え”になるにはまだまだ時間がかかるだろう。

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