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Jリーグ 7年前

名古屋、J2降格という悪夢。GM兼任監督のもとで迷走。クラブが抱えてきた構造的欠陥

text by 藤江直人 photo by Getty Images

GMと監督、評価する側とされる側の兼任

GM兼任の立場で名古屋の監督に就任した小倉隆史氏
GM兼任の立場で名古屋の監督に就任した小倉隆史氏【写真:Getty Images】

 いまとなってはシャレにならないフレーズも含まれているが、シモビッチと永井を攻撃の軸にすえる、つまり高さという「3次元」と速さという「2次元」で攻めるグランパスは、世を忍ぶ仮の姿だったことになる。

 現実的な戦いに徹しながら勝ち点を稼ぎ、同時進行で日々の練習で理想を具現化させていく。短期的な目標と中長期的なそれを両立させる自信と余裕があったのだろう。小倉前監督は笑顔でこんな言葉を残してもいる。

「すべてを形にできるほど新米監督の僕には力がないし、まだまだ時間が足りないということで、選手には迷惑をかけています」

 もっとも、ここで問われるのが指揮官としての力量となる。思い描くスタイルを現実のピッチに落とし込めず、悶々とした日々が続くなかで、他のチームもグランパス対策を着々と講じてくる。

 何よりも「高さ」と「速さ」だけで勝てるほど、J1は甘い世界ではない。5月4日のマリノス戦を最後に白星から遠ざかっていった軌跡を、チーム最古参の40歳、元日本代表GKの楢崎正剛はベルマーレ戦後にこう振り返った。

「それ(研究されて長所を出せなくなった)だけじゃないと思いますけど、ストロングポイントを生かそうにも、試合を自分たちでコントロールしながらじゃないと。そればかり一辺倒になると、相手にも止められてしまうので」

 現実的な戦いに上乗せができなかったのか、と問われた楢崎は力なく首を縦に振った。小倉前監督は7月30日のマリノス戦から5バックを採用。引き分けでもいいから、なりふり構わず勝ち点を奪いにいった。

 戦い方に迷いが生じた時点で、休養させる手もあった。実際、スコアレスドローで逃げ切った敵地でのマリノス戦を、結果的にバトンを託されるボスコ・ジュロヴスキー氏もスタンドで観戦している。

 しかし、悲しいかな、小倉前監督はGMをも兼任していた。クラブ全体を統括し、監督をはじめとする首脳陣、選手たちを見極める役割を与えられた小倉GMが、監督である自らを評価するのは極めて至難の業といっていい。

 結果としてサンフレッチェ、浦和レッズ、柏レイソルと黒星を3つ重ねたところで小倉前監督は休養に追い込まれ、GM職をも解かれた。結果的に勝ち点を「1」でも積み上げていれば残留できただけに、遅きに失した感は否めない。

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