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セリエA 7年前

インテル、3ヶ月で3人目の指揮官就任。監督交代を巡る“カオス”はなぜ生まれたのか?【現地記者解説】

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

マンチーニ辞任に繋がったトヒル会長の読み違え

マンチーニ
シーズン開幕前に辞任したロベルト・マンチーニ氏【写真:Getty Images】

 振り返れば8月にロベルト・マンチーニ監督が辞任したのも、本を正せば現場への無理解が原因だった。組織のトップはインドネシア人だが、筆頭株主は中国人資本家で、実行部隊はイタリアのミラノ。組織中枢が三極に分裂し、しかも経営権側に欧州サッカーを熟知する存在がいなかった彼らは、現場を正しく把握する能力を著しく欠いていた。一連の問題は、ここに帰結するのだ。

 まずマンチーニ監督辞任についてだが、6月の時点で彼はやる気を失っていたのだという。希望する戦力補強が叶えられず、「CLに行きたければ補強すること、そうでないならファンにそう言うべきだ」と首脳陣に突きつけたとされているが、不満は他にもあった。信頼の証として契約更新を望む指揮官に、トヒル会長が耳を傾けなかったのだ。

 クラブの事情通である『ラ・レプッブリカ』紙のアンドレア・ソレンティーノ記者はこう語る。

「この時、『クラブは17/18シーズンからディエゴ・シメオネ監督の招聘を希望している』ということが盛んに噂になっていたが、当然それはマンチーニにとって面白いわけがなかった。すでにこの時点で彼の心はインテルから離れていたのだが、ここでトヒル会長が読み違える。ビジネスの中心がインドネシアにあり、クラブに目を届けていない彼には、マンチーニの不満が見えなかった。シーズン前にやる気がないことを判断して辞めさせていれば、中途半端な時期にデ・ブールを就任させることもなかったのに」

 不満の鬱積が出たのか、昨夏に実施されたアメリカ遠征では過密すぎる日程の他に、練習内容についても選手たちから不満が出たという。そして8月上旬にマンチーニ監督は辞任し、かねてから経営陣が興味を示していると噂のあったデ・ブールを招聘した。

 現場を知っていれば開幕のわずか2週間前の新監督招聘などまずやらないところだが、その決断に確固たるポリシーがあったわけでもなかった。

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