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バルサが“ポゼッションを捨てた日”。レアルの守備と「クラシコ」が示すサッカーの新時代

text by 海老沢純一

攻撃だけでない貢献度。自らの力を示し始める

アンドレ・ゴメス
黒子に徹したアンドレ・ゴメス【写真:Getty Images】

 加入1年目の昨シーズンはチームの中で居場所を見つけることができず苦しんだコバチッチだったが、今シーズンはカゼミーロやクロースの負傷もあって出場機会を得たことで、自らの力を示し始めている。

 そんなコバチッチも本来は攻撃に高いクオリティを発揮する選手だが、この試合では守備での奮闘が光った。タックル数では、マドリーの右SBカルバハルと並んで両チーム最多の5回を記録した。

 モドリッチとコバチッチを中心に守備への高い集中力を発揮したマドリーは、カウンターによって攻撃面でもバルサを上回る展開で前半を終えた。

 対するバルセロナは、試合前には先発起用の可能性も報じられていたイニエスタがベンチスタート。代わってアンドレ・ゴメスがラキティッチとともにインサイドハーフに入った。

 本来、イニエスタはバルサの攻撃を司る存在だが、アンドレ・ゴメスは全く逆の守備的なタスクを与えられていた。バルサにとって花形とも言えるポジションだけに、この試合でのアンドレ・ゴメスは「存在感がなかった」と受け取られてしまうかもしれないが、彼の貢献度は決して低くはなかった。

 イニエスタであれば全く問題はないが、仮にアルダら攻撃重視の選手を起用していれば、たちまちマドリーのカウンターに沈んでいた可能性もあったが、アンドレ・ゴメスが黒子に徹したことでゴールを割らせはしなかった。

 攻撃面においては全く貢献できなかったが、ルイス・エンリケ監督もそれを承知で守備重視の起用法を選んだと考えられる。ホームチームのバルセロナもこの試合には守備を第一にプランを立てていたといえる。

 バルセロナのスタッツを見ると、ボール支配率は55%、パス成功本数は460本、両SBの敵陣プレー割合は56.71%となっている。本来は支配率65%、パス成功数600本、SBの敵陣プレー割合70%というのがバルサの数字だけに、この試合はかなり低い結果となっている。

 しかし、今回のパフォーマンスを見ると、ある程度は想定の範囲内だったはずだ。

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