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レアルとバルサが採用、4-4-2という解決策。ロナウド・メッシの破壊力を最大化する守備陣形【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

例外的なゴールゲッターとスーパースターの裏方仕事

年間40ゴールもとれるクリスティアーノ・ロナウド(右)とメッシ(左)
年間40ゴールもとれるクリスティアーノ・ロナウド(右)とメッシ(左)【写真:Getty Images】

 また、プレッシングでボールを奪いきれないときには引かざるを得ないが、そのときには当面4-4-2のまま守備をする。プレッシング、リトリートのいずれも4-4-2になっていて、そこからボールを奪っての攻撃も4-4-2から始動するから、結局4-4-2でプレーしている時間が多くなっているわけだ。

 レアル・マドリーのロナウド、バルセロナのメッシは、ともに例外的なゴールゲッターでポジションがウイングという共通点があり、彼らを守備で消耗させないためにチーム全体で守備の対応をした結果、どちらも4-4-2になっている事情があるわけだ。

 レアルのルーカス・バスケス(またはベイル)に相当するのはネイマールだ。ロナウドの上下動を抑えるために逆側のウイングの運動量が多くなっているように、ネイマールもかなりの上下動を要求されている。

 ネイマールはカウンターアタックの起点になっていて、彼のドリブルでの持ち出しからメッシ、スアレスへつなげてフィニッシュへ持っていくことが多い。他のチームなら守備を軽減されて前線に残るはずのネイマールだが、バルセロナではメッシが最優先なので、この仕事を引き受けるしかない。上手くやっていると思う。

 エースの逆側のウイングを下ろすときに、もう1つポイントになるのがエースの背後をカバーしてサイドに流れるMFである。レアルならクロース、バルセロナではラキティッチが主にこの役割を果たしている。2人とも中央のMFだが、サイドでの仕事も要求されることになる。

 レアルとバルサは世界選抜的なチームでスター軍団だ。しかし、スターたちが自分のプレースタイルをすべて通せるわけではない。誰かが優先されれば、必ず誰かが割を食う。

 かつてのマケレレのように裏方仕事を本業としている選手たちではない、ネイマール、ベイル、クロース、ラキティッチといったスターたちがいかに裏方仕事をこなすか。そこが世界で最も華やかなチームの行方を左右している。

(文:西部謙司)

【了】

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