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レアルとバルサが採用、4-4-2という解決策。ロナウド・メッシの破壊力を最大化する守備陣形【西部の4-4-2戦術アナライズ】

アトレティコの躍進を受けて、復活の感がある4-4-2システム。4-3-3のイメージが強いレアル・マドリー、バルセロナの二大巨頭もこのシステムを部分的に採用している。このたび『サッカー 4-4-2戦術クロニクル 守備陣形の復興と進化』(カンゼン/12月21日発売)を上梓した著者が、レアルとバルサ、両クラブの4-4-2による戦いぶりを読み解く。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

アンチェロッティが見出した「出口」

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レアル・マドリーを率い、デシマ(CL10冠)を達成したアンチェロッティ監督【写真:Getty Images】

 いつの時代でも、最高クラスのアタッカーを擁するスター軍団がレアル・マドリーである。現在はBBCと呼ばれるベイル、ベンゼマ、ロナウドがいる。1950年代にはディ・ステファノとプスカシュ、60年代はアマンシオ、70年代サンティリャーナ、80年代はブトラゲーニョとウーゴ・サンチェス、90年代はラウール、その後は銀河系時代にブラジル人のロナウド……攻撃力は常に素晴らしい。このクラブの歴代監督にとって常に課題となるのは守備である。

 ところが厄介なことに、守備に力を入れすぎてもダメなのだ。カペッロはレアルの監督を二度やり、二度ともリーグ優勝しているのに、どちらも1シーズンで退任している。守備的でレアルらしくないと批判されていた。実際は守備的というには当たらず、少し攻守のバランスを整えた程度なのだが、このクラブにおいて堅実は臆病という評価にしかならない。

 近年で上手くやったのはデル・ボスケ監督だ。ジダン、フィーゴ、ロナウド、ラウール、ロベルト・カルロスと攻撃過多のメンバー構成の中で、ぎりぎりのバランスを探り当てていた。決して堅実ではなかったが、豪華攻撃陣が叩き出す得点を失点が上回らないぎりぎりのセンを維持できていた。

 モウリーニョ監督も成績は良かったが、ライバルのバルセロナが強大すぎて、対抗措置として相手が気を悪くするような手法を用いたため、レアルの監督としては品がないという批判を浴びた。バルサ戦で守備的な戦法を採ったのも印象を悪くした。

 同じ攻撃型でもバルセロナに機能性で水を開けられていた時期に、出口を見つけたのがデシマ(CL10冠)を達成したアンチェロッティ監督である。落ち着いた立ち居振る舞い、スタープレーヤーを尊重する態度はレアルの指揮官に相応しいものだったが、彼の功績は機能性で一歩も二歩も先を行くバルセロナを上回る道筋をつけたことだ。

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