フットボールチャンネル

プレミアから中国移籍の“若年化”。札束でも埋まらない競技レベルの差、英国のファンは何を思うのか?

text by 山中忍 photo by Getty Images , Editorial Staff

常軌を逸した補強姿勢…中国へ“売る側”にメリットも

ドログバ
かつてディディエ・ドログバは34歳でチェルシーから上海申花に移籍した【写真:Getty Images】

 加えて、完全無視はできない中国バブル崩壊のリスク。スーパーリーグ勢の超大型補強は政府主導の取り組み姿勢の一環と見られ、資金面を支える国内富裕層に関しては、億万長者市民の数で北京がニューヨークを超えたという『デロイト』社の報告もある。

 しかしながら、イングランド人風に言えば「プレミアの控え選手レベルの獲得にワールドクラスの移籍金と年俸を用意する」チーム作りが、健全でも持続的でもないことは明白。発表されたばかりの外国人枠縮小も、常軌を逸した補強姿勢を抑制することが狙いだ。

 とはいえ、中国からの破格の獲得オフォーが急速に減ることはないだろう。外国人枠は4名から3名へと減ったが、アジア圏外から即戦力を引き寄せるための年俸に上限が設けられているわけではない。買う側にすれば、中国人選手のレベルアップにつながる手本、そしてファン層と収益の拡大につながる広告塔としての付加価値を備えた買い物でもある。

 売る側にとっても悪い話ではない。中国行きが多いチェルシーが好例だが、アネルカやドログバといった30代の高年俸を人件費から削除したり、控え組の売却によって、1年前のラミレスは700万ポンド(10億円弱)、今回のオスカルは3300万ポンド(46億円強)もの利益を移籍市場で生み出したりできるのだから。

 そして、実際にプレミアからスーパーリーグへと動く選手はというと、100元札をどれだけ詰め込んでも埋まらないような穴が、トップレベルのプロ選手としての心に空くことのない「グッド・ラック」を彼らに祈るしかない。

(取材・文:山中忍【ロンドン】)

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top