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“英国的スピリット”が失われたプレミア。付け焼刃の「ホームグロウン制度」が招く悪循環【東本貢司の眼識】

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

「ホームグロウン制度」の致命的欠陥

 かくて、10年の歳月は真の意味でのイングリッシュ・スピリットを限りなく希薄化させてしまった。あるとすれば見様見真似、出身だけならイングリッシュだという心許ない根拠のみで、結局は“ずっとできる外国人大物プレーヤー”への敬意と遠慮が優先するばかり…。

 突き詰めれば、そもそもが数の問題ではなく、質、それも経験に裏打ちされたその存在意義を俎上に載せて初めて、「イングランド人のいない…」の議論を始めるべきなのだ。

 だとすれば、いわゆる「ホームグロウン制度」の“付け焼き刃的”な物足りなさ、致命的な欠陥にも行き当たるだろう。このまま、プレーイングスタッフの違法化(国際化)を放置すれば、代表の強化などいつまでたっても覚束ない、という大義名分から施行されたこの“新法”には、それ以前に「何年以上の居住歴があれば国籍を問わず」などという、まるであらかじめ抜け穴が用意されているような不自然さが否めず、効果のほどはおよそ定かでない。いや、怪しいとまで言って差し支えないだろう。

 しかも、そんな“ファジー”で、精神的に成長途上の“ハーフイングリッシュ”ボーイたちにすら、新任の“大物外国人”監督は関心を向けている暇はないとしたら、彼らの行き着く先は所詮、下位ディヴィジョンのクラブへのローン移籍と、高い確率で待っている正式移籍である。これでは、お題目の「代表強化プログラム」も、アンダーエイジならいざ知らず、シニアレベルまで届きそうにない。

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