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ボスマン判決の当事者が語る、現代サッカーの移籍制度。選手たちの解放と自身の破滅【特集:ボスマン判決、20年後の風景】

シリーズ:ボスマン判決、20年後の風景 text by アルベルト・フェルナンデス photo by Gabriela Hengeveld, Getty Images

ボスマン判決はあくどく利用され完全に歪曲してしまった

――あなたが挙げたローランド・デュシャトレという人物は、スペインのアルコルコン含め、複数のクラブのオーナーを務めていることで知られていますね。そのほかにもポッツォ一族などが各国のクラブを所有していますが、フットボールクラブに関わろうとする富者を目にする機会は確実に増えています。フットボール=ビジネスという隆盛に、あなたは何かしらの意義を感じ取っていますか?

B ボスマン判決は善意によって求めたはずだが、あくどく利用されたことで完全に歪曲してしまった。1994年から1999年の間、欧州委員会の競争政策担当だったベルギー人のカレル・ヴァン・ミールトは、FIFA、UEFAに対して一切譲歩することがなかった。けれども2000年に彼の後を継いだイタリア人のマリオ・モンティがゼップ・ブラッターに手を差し出し、移籍のシステムを確立させようと再び歩み始めたわけだ。

 そうして今現在、効力が残っているのは選手の自由移籍のみとなった。FIFAをはじめとした巨大組織の界隈に関しては、スイス本部に内在するものを見るに付け、とても滑稽なわけさ。

――FIFAに言及しましたね。数ヶ月前、彼らの汚職スキャンダルが発覚したときには、どのように感じたのでしょうか?

B 彼らが不可侵の存在であったのは、すでに知れ渡っていることだった。けれども今は調査のメスが入り、それも確実に深部へ向かっている。

 ブラッターが聖人ではないことなど誰だって知っているし、四方八方に賄賂を握らせていたというのも昨日今日の話じゃない。彼はこれから辞任に追い込まれ、その後にプラティニか誰かが後継となる。ただ全員がFIFAの息がかかった人間だ。結局のところ、メンタリティーは同じであり続ける。

――プラティニはブラッター路線の継続を表すと?

B ああ、もちろんだとも。彼の息子がカタール・ワールドカップ開催に関与している様子を見れば、なおさらだ。

――ボスマン判決に話を戻しましょう。選手たちは、あなたに対して恩義を感じるべきと思いますか?

B 過去の選手たちは、私が彼らのためにしたことを理解していた。自分に手を差し伸べた選手など、ほとんどいなかったがね。この職業はとてもエゴイスティックなものだ。それ以降、様々な世代の選手たちが通り過ぎていったが、今の世代は私が誰であり、彼らに権利を与えたのだと知らないでいる。

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