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UAE戦で見えたハリルの緻密なチーム作り。競争激化で底上げされる総合力

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ハリルホジッチ
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】

 現地時間23日、日本代表はロシアW杯アジア最終予選でUAE代表と対戦し、アウェイで2-0の勝利を収めた。

 昨年9月に行われたホームでの同カードを落としていた日本にとって、リベンジマッチとも言える一戦。そしてW杯出場権獲得に大きな影響のある重要な試合だったが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「1ヶ月かけて準備してきた」ことがわかる、完璧な試合運びでUAEを退けた。

 初戦こそ敗れたものの、ここまでの戦いぶりからはハリルホジッチ監督の緻密なプランニングとマネジメント力が見えてくる。特に2列目よりも前の選手起用が、変化を象徴しているようだ。ロシアW杯アジア最終予選の初戦UAE戦から、23日のUAE戦までの2列目と前線の先発メンバーは以下の通り。

UAE戦(H):岡崎、本田、清武、香川
タイ戦(A):浅野、本田、香川、原口
イラク戦(H):岡崎、本田、清武、原口
豪州戦(A):本田、小林、香川、原口
サウジ戦(H):大迫、久保、清武、原口
UAE戦(A):大迫、久保、香川、今野、原口

 ここからわかることは、いくら実績のある選手であろうと“聖域”が存在しないこと、調子がいい選手の起用に躊躇がないこと、対戦相手によって柔軟に使う選手を変えていること、結果を残せばしっかりと評価されることだ。

 例えば所属クラブで出場機会が少なかった本田圭佑や清武弘嗣は、徐々に先発から外れていった。反対にケルンで絶好調の大迫勇也は、昨年11月にチャンスをつかんで23日のUAE戦でも最前線を任された。

 原口元気に関しては一時期ヘルタ・ベルリンで調子を落としていたが、日本代表では最終予選4試合連続ゴールなど重要な得点源として結果を残し続けてきた。故にハリルホジッチ監督は同選手をタイ戦から一貫して左サイドで使い続けている。

 指揮官の策士ぶりも光る。アウェイで困難な戦いが予想されたオーストラリア戦では、最前線に本田を据えて守備的に戦った。トップ下の香川真司も懸命なプレッシングで貢献し、敵地で勝ち点1という最低限の結果を持ち帰ってきた。

 今回のUAE戦では大黒柱の長谷部誠不在を、香川とベテランの今野泰幸をインサイドハーフで起用することによってカバー。相手のキーマンを徹底して潰しつつ、中盤のダイナミズムを生かして試合の主導権を握る戦術を短期間でチームに浸透させて見せた。

 比較的楽な戦いが望めるタイ戦で浅野拓磨にチャンスを与えたり、要所で小林悠や柏木陽介、大島僚太といった国内で結果を残していた選手を試したり、ハリルホジッチ監督の柔軟さは要所に発揮されている。

 こういった引き出しの多さは、選手同士の競争にも影響を及ぼしている。単にベテランから若手への移り変わりではなく、どんな選手でも結果を残さなければ淘汰されるという危機感を持ちながら日々を過ごせているのではないだろうか。

 競争が激しくなれば、日本代表に選ばれるためにこれまで以上の努力が必要になる。それが結果的に選手個人の成長に結びついていくかもしれない。

 ハリルホジッチ監督は、今回の2連戦に向けた日本代表メンバー発表記者会見で発した「日本人であれば、Jリーグでプレーしていも、海外でプレーしていても、全員が代表候補だ」という言葉には一片の嘘も偽りもない。全員が同じスタートラインに立っていることを示す指揮官の緻密なチーム作りが、予選を通して見えてきた。

(文:舩木渉)

【了】

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