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セリエA 7年前

ユーベ指揮官、戦術以上に際立つ人心掌握術。2度目のCL決勝。苦汁なめたミラン時代糧に

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

イタリアでは異質の角度でサッカーへの感性を磨く

現役時代、ペルージャ在籍当時のアッレグリ
現役時代、ペルージャ在籍当時のアッレグリ【写真:Getty Images】

 そもそもアッレグリは現役時代から、守備に厳しいイタリアサッカーの主流からは少し違った角度でサッカーへの知性と感覚を磨いてきた。ポジションはインサイドMF。当時はとにかく守備に走れる中盤の選手が主流とされてきた中、長短の正確なキックで攻撃に絡み、ゴール前にも飛び出すプレースタイルは異色を放っていた。

 彼は攻撃センスを尊重してくれる指導者と巡り会えたことで、その感性を伸ばすことができた。1991年、当時セリエBにいたペスカーラを率いるジョバンニ・ガレオーネ監督だ。4-3-3をベースとした攻撃的な戦術を駆使するガレオーネは、アッレグリを見て「他のチームなら良さを潰される」と考え、中盤の守備を教えつつ攻撃力を伸ばす指導を行った。

 そのシーズンに彼らはA昇格を勝ち取り、翌シーズンにセリエAへ挑戦した。そして第2節のミラン戦で、開始52秒にして豪快なシュートをねじ込んだのがアッレグリだったのだ。

 残念ながらクラブは残留を勝ち取れなかったが、彼自身はシーズンで12ゴールを獲得。その後カリアリ、ペルージャ、パドヴァ、ナポリなどを渡り歩き、最後は2003年に第4部のアリアネーゼで現役を終えた。そして指導者としてのキャリアを始めるわけだが、攻撃から戦術を組み立てるというガレオーネの観念を継承し、当時としては独自の指導理論を築いた。

 プロ監督としてのライセンスを得るため、コベルチャーノの技術部門に提出した論文は「3枚の中盤におけるミッドフィルダー3名の特質」。4-3-3のシステムを基に、中盤の各ポジションで必要とされる役割とその理由を細かく規定。相手のボールの位置によってポジションのスライドを行ったり、攻め上がりからの攻撃の選択肢を提示したりなど、チーム戦術上の連動も指南されていた。

 選手を戦術の型に当てはめるのではなく、個々のプレースタイルを尊重しながら、細かい技術・戦術指導に注力するアプローチだ。そして彼のサッカーは程なく、イタリアサッカー界に衝撃をもたらすことになった。

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