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日本代表 7年前

ハリルの秘密兵器・加藤恒平が開いた新たな扉。激しさと謙虚さ、問われる日本代表としての資質

text by 元川悦子 photo by Getty Images

加藤が開いた新たな扉。指揮官からのメッセージ

 実際、加藤のような異色の経歴を持つ選手に日本代表監督がフォーカスした例はこれまで皆無に等しかった。2010年南アフリカW杯初戦・カメルーン戦(ブルームフォンテーン)で本田圭佑(ミラン)の先制弾をアシストした松井大輔(磐田)がブルガリアのスラビア・ソフィアやポーランドのレヒア・グダニスクに移籍した時も、アルベルト・ザッケローニ監督は目もくれなかった。

 瀬戸貴幸(アストラ=ルーマニア)でUEFAヨーロッパリーグに出場しても、表舞台浮上のチャンスは与えられなかった。加藤の場合、モンテネグロというハリルホジッチ監督の手の届く国から欧州キャリアをスタートさせたアドバンテージはあったものの、J1未経験の選手を日本代表呼ぶというのは、指揮官にとってもハードルが高いはず。そこに踏み切ったことで、多くの無名選手が勇気と希望を持てたのは確かだ。

「恒平もそうだけど、すべての日本人の選手に日本代表という場所の扉が開かれている。今回の監督の選考はいいメッセージだと思うし、『誰にも保証がない』というメッセージでもある。代表という場は常に1人ひとりがベストを求めなきゃいけない。それがチームを強くしていくのかなと思います」と今回最年長34歳の守護神・川島永嗣(メス)は神妙な面持ちで語っていたが、W杯出場経験があっても、コンディションやパフォーマンスがよくなければ外されるのが代表だ。苦境を味わったことがある川島は、加藤の抜擢をより前向きに受け止められるはずである。

 雑草魂で這い上がってきた岡崎、長期間代表から離れた末に戻ってきた大迫や乾など、今のハリルジャパンには紆余曲折を経た人間が少なくない。サッカーの厳しさ、世界のレベルの高さを痛感する選手が増え、それぞれ辛く厳しい経験を共有していくことも、日本代表のタフさ、粘り強さを養うことにつながる。

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