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日本代表 7年前

ハリルの秘密兵器・加藤恒平が開いた新たな扉。激しさと謙虚さ、問われる日本代表としての資質

text by 元川悦子 photo by Getty Images

代表選手に必要なし資質。初招集選手が避けて通れない道

 今回の加藤はピッチ内外で他のメンバーと積極的にコミュニケーションをとっているというが、そういう行動を自ら積極的にとれる人間性を備えたプレーヤーがもっと多くならなければ、本当の意味で開かれた代表にはならない。彼には日の丸をつける選手としての十分な資質もあるようだ。

 今のところチームに大きな刺激を与え、自らも「つかみはOK」と言える状態の加藤だが、真価が問われるのはこれから。サッカー選手の技術・戦術・メンタル・フィジカル能力はフルコートで11対11を戦ってみて初めて分かる。仮に山口蛍と同等の能力を備えていたとしても、初めて尽くしの彼には「周りの特徴を理解する」という重要な課題が残されている。

 一例を挙げると、久しぶりに代表に戻ってきた乾は、2009年から断続的に代表でプレーしているので周りとの連携は問題ない。今回初招集された中村航輔(柏)、三浦弦太(G大阪)にしても、U-19代表で井手口陽介(G大阪)とともにアジア予選を戦った経験がある。そういった共有部分が皆無の加藤のマイナス面は大きい。代表は活動期間が短いため、限られた時間の中で周りと良さを引き出し合う適応力と臨機応変さがなければ、生き残るのは非常に難しい。

 ハビエル・アギーレ監督時代に、皆川佑介(広島)と坂井達弥(大分)がサプライズ招集されたものの、2人は新体制一発目だった2015年9月のウルグアイ戦(札幌)に出場したただけで定着できなかった。過去にもA代表キャップ数が1試合か2試合で終わった選手は数多くいた。加藤が彼らと同じ轍を踏まず、本当の意味で代表を活性化する戦力になるためにも、周りとうまく融合しながら、自分のストロングポイントを発揮していくこと。それが極めて重要だ。

「ようやく代表に呼ばれた。でもまだスタートラインに立っただけ。ここから呼ばれ続けることであったり、試合に出続けることが難しいと思うので、そこを目指してやっていきます」と強調した加藤が真の起爆剤になれるか否か。それを今後1週間、まずはきちんと見極めていくべきだ。いずれにせよ、一過性のブームに終わってほしくない。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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