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日本代表 7年前

【U20】日本、16強敗退も導き出した「正解」。全ての日本代表で採用すべき「崩しの型」【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

3人で1人を攻略した距離感。狭いエリアでの崩し

U-20代表の堂安律。小さなスペースを使いながら相手の守備ブロックを果敢に崩していった
U-20代表の堂安律。小さなスペースを使いながら相手の守備ブロックを果敢に崩していった【写真:Getty Images】

 延長12分、堂安→久保→岩崎→堂安とつないで、堂安がシュートした場面では非常に狭いスペースを突破していた。この距離感でプレーできたのも進歩である。

 中央左寄りでボールを持った堂安の5メートルほど前方に久保が立ち、その足下へ堂安からのパスが入る。久保はベネズエラのMFとDFの間のつかまりにくい場所に立ち、堂安からのパスを引き出していた。このポジショニングが良かった。そして、堂安からのパスをワンタッチでターン。ここからはわずか1、2メートルの距離でのコンビネーションである。

 岩崎をマークしていたDFが一歩前に出て久保に寄せるが、久保はその動きを見てDFの重心の乗っている側の足(左足)ぎりぎりを通過させるパスを岩崎へ通す。岩崎はワンタッチで久保へ短いリターン、そこへ久保と堂安が動いていて、堂安がボールを受けてすかさずシュートした。

 ベネズエラのCBの1人は久保と岩崎の2人を相手にしなければならず、2人のパス交換で無力化されている。もう1人のCBは後ろへ下がってしまっていて何もできていない。さらに、最初にパスを出した堂安が寄ってきているので、局面的にはベネズエラのCB1人に日本は3人になっていた。俯瞰でみればベネズエラの4バックは揃っているが、狭い局面でみれば日本の3人でベネズエラの1人をやっつけた形である。

 パスの距離は5メートル、1メートル、1メートルと極めて短いが、この距離だからこそベネズエラのDFに修正の時間を全く与えないままシュートへ持ち込めているわけだ。

 ボールタッチの精度、相手の体重移動を見る眼、そして距離感。日本は広いスペースで1対1を作って個の力で突破するよりも、ごく近い距離でコンビネーションを使ったほうが有利。そのためのアイデア、ボールコントロール、センスを備えた選手が今回のチームには何人かいた。それが崩しを成功させていた要因である。

 U-20の崩し方は、すべてのカテゴリーの日本代表で採り入れるべきものだ。世界と戦ううえで、最後のフィニッシュへ持ち込むところでの正解を出したのは、今回のチームの大きな功績といえる。

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