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ベイルかイスコか、鍵握るジダンの選択。CL決勝が「しょっぱい試合」にならない理由

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

大舞台一発勝負ゆえのこう着は心配無用?

ガレス・ベイル イスコ
ジダンはベイルとイスコのどちらを選ぶのか【写真:Getty Images】

「決勝の取材か、それはいい試合になるといいね。もっともCLに限らず決勝戦ってのは、大抵がしょっぱい内容になるもんだけどね。私は16年前のミラノでバレンシアとバイエルン・ミュンヘンが対戦した時に観戦に行ったんだが、面白かったのは最初の3分間だけだったよ。そこから先は…」

 カーディフで行われる今回のUEFAチャンピオンズリーグ決勝取材にあたって、イギリスはバーミンガムから入国し、同地の空港で入国審査を受けた時のことだ。筆者に滞在日数と渡航目的を質問した審査官は、返事を聞くなりニコニコとしながらそんな雑談を始めた。入国者の数が少ない時間帯だったので、そんなリラックスした雰囲気になったのだろう。ともかくこういう話を入国時に聞かされると、こちらのテンションも上がるというものである。

 振り返れば確かに、CLといいワールドカップといい必ずしも決勝戦でいい内容の試合が展開されるとは限らない。むしろ逆に、両チームともに負けたくないという思いからこう着状態に陥り、スペクタクル性を欠いたまま時間だけが経過する場合も少なくない。 01年でのミラノのCL決勝はまさにそういう試合だった。守備戦術や突き詰めた結果の表れでもあるので、ロースコアの試合は必ずしも悪いことだとは言えない部分もあるのだが…。

 ただ今回の決勝は、両チームともに腰が引けたまま試合を終える、という内容にはなりにくいだろう。前線にタレントを揃えるレアル・マドリーは、カゼミロを中盤の底に置いてバランスも大事にしているとはいえ、やはり攻撃的に戦うことを宿命づけられたチームだ。一方で守備がストロングポイントとされる現在のユベントスも、守り倒すだけのサッカーはしてこなかった。相手の弱点を攻撃的に突こうとし、実際そのように攻めきったことで、彼らは決勝まで勝ち登ってきたのだ。

 今回もユーベは、レアル・マドリーの弱点はどこであるかを見抜き、それを突くことで試合の均衡を破っていくというアプローチを取るだろう。その意味で重要なのは、ギャレス・ベイルなのかイスコなのか、ジネディーヌ・ジダン監督の選択はどちらになるのかということだ。なぜならそれは、レアル・マドリーの守備に大きく関わる話だからだ。

 ベイルを起用した場合は4-3-3。だが彼は不調で、守備への参加意識も高くはなかった。この決勝トーナメントで対戦したナポリは彼は、ベイルが守備に戻らず味方との距離を開けがちになっていた右サイドを狙った。そこを起点に次々と攻撃を繰り返し、少なくとも内容では善戦を果たしている。ただ以降の試合ではイスコが台頭し、彼をトップ下に据えた4-3-1-2でレアル・マドリーの守備バランスは回復したように見えた。

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