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柴崎岳がテネリフェのヒーローになった夜。日出ずる国の司令塔が灯した希望の光

text by 舩木渉 photo by Getty Images

成功した柴崎のサイドハーフ起用。貴重な先制弾

左サイドMFとして先発出場した柴崎岳
左サイドMFとして先発出場した柴崎岳【写真:Getty Images】

 結果的にメンバー変更は成功。カディスが前の試合ほどの積極性を見せず、前線からのプレスも控えめだったこともあり、センターバックとボランチの4人を中心にしっかりとゲームを組み立てることができた。柴崎のサイド起用も結果につながる。

 前半34分、右サイド深くまで侵入したスソがゴール前に低くて速いパスを送ると、そのボールは逆サイドまで流れていく。そこに詰めていたのが、左サイドから走りこんでいた柴崎。完全フリーの状態で、落ち着いてシュートをゴールに蹴り込んだ。

 この1点でテネリフェは2戦合計スコアを1-1とし、プレーオフ決勝進出に望みをつなぐ。当然2万人を超える観客は歓喜に包まれた。

“Si se puede! Si se puede!”

 希望を見出したテネリフェファンたちの大合唱が始まる。意味は“Yes we can!”、つまり「俺たちならできる!」。柴崎が島のヒーローになった瞬間だった。

 日本のJ1昇格プレーオフは一発勝負で、90分間戦って引き分けの場合はレギュラーシーズンの上位チームが勝ち上がる。だが、スペインはルールが異なり、ホーム&アウェイ方式で行われる。アウェイゴールも含めて2試合合計の得失点差が同じ場合、2ndレグで15分ハーフの延長戦が行われて勝敗を決する。

 アウェイで先制を許したカディスだったが、もしアウェイゴールをひとつでも奪えば、その瞬間にテネリフェは勝利のためさらに2ゴールが必要になる状況。当然猛反撃に転じた。

 そうなるとテネリフェの守備陣が意地を見せる。今季何度も大ピンチを救ってきた守護神ダニ・エルナンデスが圧巻のスーパーセーブ連発でカディスの攻撃をシャットアウトすれば、4人のDFたちも体を張ってゴールを死守する。

 チーム全体でまずは90分間しっかり戦い抜き、2戦合計スコア1-1のまま勝敗の行方は延長戦に託された。

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