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川島永嗣と酒井宏樹、フランスで確かな足跡残した2人の日本人。来る新シーズンへ高まる期待

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

結実した日々の努力。来季は新たなチャレンジが待っている

 シーズン序盤に彼に話を聞いた記者仲間は、「第3GKと呼ばれることには敏感になっている様子だった」と感想をもらしていたが、シーズンが終わる頃の川島にそのような様子は見られなかった。

 先発がどう、ヒエラルキーがどう、ということよりも、とにかく今、自分の目の前にあることに一生懸命取り組んだ先にあるものが、自分の行くべき道だと感じている、と話す言葉どおりに清々しい姿があった。

 結果的にスタメンの座をゲットした後だったからそう言えたのかどうかはわからないが、彼にとって昨シーズンが非常に充実した1年だったことは、周囲の反応からも感じ取れた。

 たとえば川島が試合のピッチに立ったときには、彼がいかにチームメイトから信頼を得ているかが目に見えて伝わってきた。練習場などでも、チームメイトは、日本人記者の姿を見ると、「エイジかい? 向こうにいたと思うから、声かけてきてやるよ!」というような気遣いを見せてくれる。そういうことは、その選手がチームメイトに好かれている場合しか起こらないものだ。

「実際、監督やスタッフは、相当エイジの存在をありがたがっているよ。ついこの前、監督と話をした時もそう言っていたんだ」とわざわざ言いに来てくれた番記者もいた。

 そしてヒンシュベルゲ監督は、「来季はGKのヒエラルキーを見直す」と考えているそうだ。それは昨季第1GKだったディディヨンに発破をかける意味もある。川島の存在が、第1GKのステータスに安住しかけていたディディヨンを刺激したのは間違いない。「その意味でもカワシマには感謝だ」とファンサイトに書き込んでいるサポーターもいた。

 懸命に取り組む姿が、自分の状況や周囲の反応を変えてしまう、という実例をまさに目撃した気がした。そうして第1GKの座をつかんで昨季を終えた川島には、新シーズンにはまた新たなチャレンジが待っている。

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