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“2軍”で優勝のドイツ。ハードワークで躍進のチリ。日本が学ぶべき強化方針の一貫性【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

疲労という落とし穴。“2軍”で優勝してしまうドイツの自力

ドイツは“2軍”ともいえるメンバー構成ながら、コンフェデレーションズカップを制した
ドイツは“2軍”ともいえるメンバー構成ながら、コンフェデレーションズカップを制した【写真:Getty Images】

 ハードワークの権化であるビダル、サンチェスのミスも目立った。ファーストタッチが微妙にズレている、それでもいつもなら無理が利くので何とかしまうのだがそこでミスが出る。ものすごく動くのでわかりにくいが、チリの選手たちにはいつものキレが少しだけかけていた。疲労の蓄積によるものだと思う。

 失点の前にはハイプレスから奪ってビダルのシュート、GKが弾いたところをサンチェスが詰めたが至近距離からのシュートをミスしていた。

 プレスで奪い、ビダルは切り返しで1人抜いてシュート。ハードワークとテクニックのチリらしいチャンスメークだったが、肝心なところで体が言うことをきいてくれない。ほかの決定機もシュートを打ち上げてしまうなど微妙だが決定的なミスタッチが多かった。

 ハードワークのチリにはフレッシュな選手がいない。無理に無理を重ねられるところに強みがある一方、それがテクニックに影響を及ぼすこともある。メッシやロナウドは常にフレッシュな状態でいて、ここという瞬間に最高のテクニックを発揮するが、そういうタイプはチリにはいない。

 ハードワークを免除されている選手がいないのは強みである半面、強烈なノックアウトパンチがない。ドイツに先行されたことで、チリはさらに無理を重ねなければならず必要な精度が落ちてしまった。

 ドイツは幸運だった。先制したことで得意とする堅守速攻の流れを継続すればよかった。もし、逆にリードされていたらドイツにできることはそんなになかったと思う。ハードワークはチリに負けていないが、敵のハイプレスを何とも思わないテクニシャンはキミッヒとドラクスラーぐらい。この2人はすでに“1軍”の主力クラスである。

 今回の“2軍”チームで株を上げたのはCFのヴェルナーだ。ライプツィヒでブレイクした頑健かつ俊敏なゴールゲッター。プル・アウェイでマークを外すのも上手く、クロースやエジルなどパサーのレベルが違う“1軍”ならもっと活躍できるだろう。

 近年のドイツは珍しくCF不足だった。ベテランのクローゼとマリオ・ゴメスに頼ってきたわけだが、ようやく適材をみつけられたのではないか。

 それにしても若手主体でコンフェデレーションズカップに優勝できてしまうドイツの地力には驚かされる。今回のメンバーから何人かは確実に“1軍”に昇格していくだろう。

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