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欧州でゼロからのクラブづくり FCバサラマインツの挑戦【06】怪我人ゼロで試合を終わらせるために

シリーズ:FCバサラマインツの挑戦 text by FC Basara Mainz photo by FC Basara Mainz

万が一のために、責任をとるのがドクター

バサラマインツ
ドクター藤原の仕事場の病院。普段は日本人一人、病院でドイツ人に囲まれて働いている。【写真:FC Basara Mainz】

 正直「試合中は誰も怪我しないでくれ」と祈りながら、選手のプレーを見守っています。しかしながら、9部とはいえ相手選手の体も大きく、ドイツのプレーやボディコンタクトは非常に激しいので、脳しんとう、骨折などあらゆる事故が起こり得ます。

 どんなに対策をしても事故が起こる時は起こってしまいます。どんなに備えていても、選手が倒れた時はドキッとさせられ、無事に起き上がってプレーに戻ってくれるとほっとするの繰り返しです。万一の時に迅速に処置できるよう試合中も頭の中は応急処置のシミュレーションでいっぱいです。

 ドイツのアマチュアチームで専属ドクターが帯同しているという恵まれたチームは皆無に等しく(私たちバサラマインツはそういう意味では恵まれている環境なのかもしれません。)例えば試合中に選手が倒れた時に、バサラマインツの選手だけでなく、相手チームの選手を診ることが多くなりました。

 始めのうちは日本人のドクターを見ると、大体は怪訝な顔をされます。そういう時は監督のマティアスが「うちのドクターだから」と相手のスタッフに紹介してくれるので、たとえ対戦相手であっても仕事はやりやすくなりました。

 以前応急処置をした相手チームの選手から、再度対戦した時に「前回はありがとうな」と声をかけてもらえた時はやっぱり嬉しいですね。ブルガリアでの医学生時代に応急処置をしようとグラウンドに入ったら相手チームから「帰れー」などど野次を飛ばされたこともあったことも、今では笑い話にできるようになりました。

 僕がいることで他チームからも評価され、バサラマインツが地域で認められて来れば今後の活動にも幅が出ますし、これからもずっと続けていかなくてはと思います。そういう意味でも試合中はバサラマインツの選手だけでなく、相手チームの選手に対しても「責任は自分にある」という気概で当日の試合を見守っています。

 最後に、2015年の日本人メディカルサポートチームの立ち上げから、今年はトレーナーも加わり、日本人アスリートをサポートできる環境が少しずつですが作ることができました。この記事をご覧頂いて、もし今後バサラマインツでプレーしたい選手と思ってくれる選手や、共にメディカルサポートをしてくれるスタッフが増えてくれればドイツで挑戦している価値が出る。それが至上の喜びです。

※FCバサラマインツでは新たに「広報・営業スタッフ留学プログラム」を開設致しました。現在、プログラム参加者を随時募集しております。現場での広報・マーケティング活動や実践的な座学などを通して、本場のドイツサッカーを体感して頂く充実したプログラムとなっております。日本、欧州在住の如何も問いません。

 ドイツでのサッカークラブ運営にご興味ある方はお問い合わせだけでも結構ですので、是非お気軽にcontact@basara-mainz.comまでご連絡下さい。

【了】

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