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代表 7年前

イングランド、育成改革が結実しU-20W杯制覇。次なる課題は“ブラックホール”問題

text by 山中忍 photo by Getty Images

「ブラックホール」とも呼ばれる巨大なギャップ

17/18シーズンからリバプールでプレーするドミニク・ソランケ
17/18シーズンからリバプールでプレーするドミニク・ソランケ【写真:Getty Images】

 U-20W杯決勝でチェルシーを凌ぐ4名がスタメン入りしたエバートンも、カテゴリー1のアカデミーを持つ。ビッグクラブではないスウォンジーが過去5年間でカテゴリー3から1へとアカデミーの等級を上げ、初のプレミア昇格を決めたばかりのブライトンもアカデミーは国内最高等級。

 いずれも、22年W杯優勝で“スリー・ライオンズ”復興を世に告げんとするFAをはじめ、イングランドのサッカー界にとっては朗報だ。

 但し、未来が薔薇色とまでは言えない。A代表が国際大会で成果を残すためには、巷で「大人の戦場」と呼ばれるトップチームでの経験が不可欠。ところがイングランドのトップレベルでは、ユースと1軍の間に「ブラックホール」とも呼ばれる巨大なギャップが存在するのだ。

“TVマネー”で潤うプレミアでは、ユース出身者の登用よりも即戦力の購入が優先される世界。この問題点に関してもチェルシーが代表例で、若手の大量レンタル放出やベンチ止まりが当たり前のクラブでは、U-20W杯で脚光を浴びたソランケにしても僅か15分間しか1軍のピッチを経験できなかった。

 昨季末、若手の起用に積極的なユルゲン・クロップ率いるリバプールへの移籍を決めた背景には、今時の若手にとっては高年俸よりも得難い出場機会への欲望があったに違いない。

 育成改革が実を結び始めているイングランドでは、アカデミーの成果物を磨くべき1軍で若手を仕上げる勇気と辛抱という意識改革が求められる。ユース代表が輝いた「黄金の夏」に差した将来への光を、例年のようにブラックホールで消滅させてはならない。

(取材・文:山中忍【イングランド】)

【了】

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