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いわきFCが示した異質の「フィジカル」。7部相当のクラブ、固定観念に抗う挑戦

text by 藤江直人 photo by Football Channel

フィジカルだけでなく、ボールをつなぐ勇気も

 練習時間の半分近くを、フィジカルトレーニングにあてる。最近は選手個々を遺伝子レベルまで検査し、それぞれに合ったトレーニング方法を探るトライも開始している。大倉代表取締役が続ける。

「ドーム側も僕と同じことを考えていたので、だからこそ『日本サッカー界のフィジカルスタンダードを変える』というコンセプトにつながったというのはありますね。ただ、フィジカル、フィジカルと言われていますけど、当然ながらそれだけじゃない。

 今日の試合を見ていただけたらわかると思いますけど、ボールをしっかりつなごうとする勇気もある。上手い選手が、走る、倒れない、前へボールを運ぶといった部分のフィジカルが強くなることで、どんどん変わっていく。それが当たり前の流れだと思っているので」

 選手は全員がアマチュア。午前中を練習にあて、午後は同じ敷地内にある「ドームいわきベース」で仕事に従事して収入を得る。たとえば、エスパルス戦で先発した11人の平均年齢は22.3歳。最年長はボランチの板倉直紀で、1992年11月22日生まれの24歳となっている。

 元JリーガーはJFAアカデミー福島から2014シーズンに加入したJ3のAC長野パルセイロで、2試合に出場している22歳の平岡しかいない。Jリーグ参入を目指しながら、戦うカテゴリーが上がっていっても、今シーズンのようなチーム構成を維持していくと大倉代表取締役は言う。

「Jリーグの選手を取ろう、という意欲がないですね。目指していく『90分間ノンストップで倒れない、魂のフットボール』を考えたときに、25歳、26歳の選手を取っても難しいので。どのように選手を育てるかが大事だし、その意味では高卒で(キャンバスが)真っ白な子を見つけていかないと」

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