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【戸田和幸の眼】アーセナル、失意の1年。問われるヴェンゲルの真価【16/17シーズン総括】

シリーズ:16/17欧州主要クラブシーズン査定 text by 戸田和幸 photo by Getty Images, Natsuki Nakazawa

3バック導入の理由。昨季のMVPは?

ペトル・チェフ
戸田和幸氏の選ぶアーセナルの16/17シーズンMVPはペトル・チェフ【写真:Getty Images】

 またアーセナルは攻撃的なスタイルを志向する、ボールを握ってナンボのチームです。ヴェンゲル監督は基本的に多くの約束事を課すのではなく、選手を信頼してピッチに送り出すタイプの監督なのではないかと思いますし、しっかりとした守備というよりはボールを保持することで守るといった考え方を持っていると思います。

 ですからロングボールを多用され、体を当てにくるような相手に対してやはり脆いところはありましたし、失点数もビッグ6の中では一番多い結果となっています。

 クリスタル・パレス戦の敗戦(第32節 0-3で敗戦)を受けて3バックに変更しましたが、4-2-3-1に変わる攻撃的なオプションという意味ではなく、あくまで応急処置的に守備から整えたいというものであって、前向きな発展性のあるものではなかったのではないかと思いました。

 もちろんオックスレイド・チェンバレンのような選手がいたからこそのシステム変更だとは思いますが、そうだとしても守備から整えたかったという部分については変わらないと思います。

 3-4-3というシステムは自陣に構えた守備になると後ろが5人・中盤が4人になるので中盤の右サイドにエジルが入りますが、やはりエジルに守備は難しいですよね。

 ホワイト・ハート・レーンでの最後のノースロンドン・ダービーとなったトッテナム戦ではエジルのところを徹底的に狙われていました。

 チェルシーのようにとは言いませんが、誰かの守備を免除するのであれば、そこに対して他でどうカバーしていくといった形を持っていなければ機能させることは難しいと思います。例えばFAカップ決勝のように常に下がることなく前に出てプレスをかけながら技術とアイデアを生かした速いサッカーができるのであれば、3-4-3でも十分機能するのではないかと思います。

 昨季のMVPを挙げるとすれば、サンチェスか(ペトル・)チェフでしょうか。いや、チェフですね。安定感は抜群ですし、ビッグセーブもできるのが一番いいですよね。ビッグセーブはできるけど安定感には欠ける、もしくは安定感はあるけどビッグセーブはない、このどちらかが多いと思いますが、チェフの場合は両方持っています。だから素晴らしいGKだと言われ続けているのだと思いますし、まだまだいけますね。

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