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【戸田和幸の眼】アーセナル、失意の1年。問われるヴェンゲルの真価【16/17シーズン総括】

まもなくヨーロッパサッカーの新シーズンが開幕する。タイトル獲得や一昨季からの巻き返しなど様々な思惑を抱えていたプレミアリーグ6強クラブ、それぞれの昨季の戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。スポナビライブのプレミアリーグ解説でお馴染みの戸田和幸氏が分析する。今回は19年続いていたCL出場権獲得を逃し、アーセン・ヴェンゲル監督の去就にも注目が集まったアーセナルの1年を振り返ってもらった。(解説:戸田和幸/構成:フットボールチャンネル編集部)

シリーズ:16/17欧州主要クラブシーズン査定 text by 戸田和幸 photo by Getty Images, Natsuki Nakazawa

顕著になったエジルとサンチェスへの依存

戸田和幸
戸田和幸氏が16/17シーズンのアーセナルを分析した【写真:Getty Images, 中澤捺生/ジュニアサッカーを応援しよう!編集部】

総合評価:C

 昨季のアーセナルがCL出場権獲得を逃したのは、単純に力及ばずということだったのではないでしょうか。

 (メスト・)エジルと(アレクシス・)サンチェスの2人が多くを動かすチームで、彼ら2人を封じられると一気に試合が難しくなってしまうということ、多くの得点を挙げられるストライカーがいないことが問題だったと思います。

 そして他のクラブに比べると特定の個に依存する傾向が強いスタイルなので、どうしてもエジルとサンチェスの調子に左右されますし、また他のライバルと比較して戦力的に足りないポジションもあったと思います。

 (シュコドラン・)ムスタフィが加わった2センターバックはそれぞれの能力・ユニットとしての連携含め大きく改善されたのではないかと思いますし、(ペトル・)チェフも変わらずレベルの高さを見せていましたが、一方で左サイドバックと中盤の真ん中とストライカーについては物足りなさが残ったのではないでしょうか。

 アーセナルというチームを語る上では規律や組織よりも選手の能力とアイデアを生かす非常に流動的なスタイルがまず出てくると思いますし、そのスタイルが成績にも影響しているのではないかと考えています。

 オーソドックスな4-2-3-1システムを採用し、エジルとサンチェスを中心にチームを構成しますが、試合のパフォーマンスについては選手のアイデアやモチベージョンしだいなところはあったと思います。

 昨季に関してはエジルが時折強い批判を受けていましたが、チームのスタイルとしてサンチェスとエジルに大きく依存をしている分負担は大きくなるということと、実際に彼らが疲弊する、もしくは消された時は難しい試合になっていたという、もう少し広い部分に目を向けるべきではないかと思いました。

 ビッグプレーヤー故にパフォーマンスが良くなければ真っ先に批判を受けてしまうところはありますが、相手が「そこ」を消しにきた時のチームとしての解決策をしっかり持てていたのか考えてみることの方が重要ではないかと考えていました。

 そして(サンティ・)カソルラというコンダクターが怪我で離脱していたため、サンチェスとエジルの2人で組み立てからチャンスメイク、仕上げまでのほぼ全てをやらなければいけなかったという意味で彼ら2人にかかる負担は大きかったです。その2人を中心にチームが構成されていることもあるとは思いますが、彼らを支えたり生かしたりできるような選手が足らなかったといえるのではないでしょうか。

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